講演情報
[P3-2-4]下部進行直腸癌に対し術前集学的治療を行った3症例について
新垣 淳也, 佐村 博範, 堀 義城, 山城 直嗣, 古波倉 史子, 長嶺 義哲, 原田 哲嗣, 本成 永, 金城 直, 伊禮 俊充, 亀山 眞一郎, 伊志嶺 朝成 (浦添総合病院消化器病センター外科)
(はじめに) 下部進行直腸癌症例の治療成績を向上させるため,術前放射線治療に加え全身化学療法を術前に行うTotal Neoadjuvant Therapy(TNT)が広く行われるようになってきた.(目的) 下部進行直腸癌3症例について報告する.(症例1)44歳,女性.3カ月前より脱出,疼痛,出血あり前医受診.肛門部腫瘍より生検で腺癌認め紹介となった.CT検査で下部直腸,肛門管に長径8cm腫瘤あり,傍直腸や右側方リンパ節に腫大を認めた.2021年9月腹腔鏡下S状結腸人工肛門造設術施行.PET-CT検査で右側方リンパ節,右鼠経リンパ節の集積を認めた.cT4a,N3,M1a(LYM),pStageIVa.全身化学療法,化学放射線療法,手術を行う方針として,2021年10月より全身化学療法(FOLFOXIRI,FOLFOXIRI+BEV total 9コース),2022年4月化学放射線療法45Gy施行.2022年6月,腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術(APR),膣後壁合併切除術,右側方リンパ節郭清術施行.病理検査:pCR,治療効果判定:Grade3であった.(症例2)55歳,男性.2021年8月,肛門痛,発熱あり近医より紹介.CT検査で下部直腸癌による肛門周囲膿瘍疑い.手術:肛門部切開排膿シートンドレナージ術,腹腔鏡下S状結腸人工肛門造設術施行した.生検で高~中分化腺癌認め,cT4a,N1b~N2a,M0,StageIIIbまたはIIIcと診断した.TNT施行.2022年7月,腹腔鏡下(APR),前立腺全摘,精嚢切除,膀胱瘻造設,臀溝皮弁術施行.病理検査:Rb,Type 5,muc,ypT4a,N0,cM0,pStageIIb.治療効果判定:Grade2であった.(症例3) 60歳,男性.5カ月前から肛門痛が続いていた.2022年8月肛門から脱出する腫瘍あり生検で中分化腺癌を認めたが来院せず.2022年10月,肛門痛強くなり再受診.CT検査:下部直腸癌による肛門周囲膿瘍の所見であった.手術:肛門周囲切開排膿シートンドレナージ術,腹腔鏡下S状結腸人工肛門造設術施行.下部直腸癌cT4a,N1b~N2a,M0,StageIIIaまたはIIIbと診断した.TNT施行.2023年8月,腹腔鏡下(APR).病理検査:Rb-P,Type 5,tub1,ypT2,N0,cM0,pStageI.治療効果判定:Grade1bであった.(考察)3症例ともにdown stageの治療効果が得られた.下部進行直腸癌に対し術前集学的治療は有用であると考え症例の蓄積が必要である.