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[O13-5]術前化学療法における分子標的治療薬併用の有無による組織学的有効性と大腸癌手術成績の比較検討

清水 友哉, 髙山 裕司, 松澤 夏未, 田巻 佐和子, 福井 太郎, 宮倉 安幸, 力山 敏樹 (自治医科大学附属さいたま医療センター)
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【背景】大腸癌の術前化学療法において,殺細胞性抗癌薬に分子標的治療薬を加えるかどうかについては未だコンセンサスが得られていない.切除可能局所進行大腸癌や切除可能遠隔転移を有する大腸癌の治療方針は手術単独から分子標的治療薬併用の術前化学療法を行う施設までさまざまである.
【目的】切除可能局所進行大腸癌あるいは切除可能遠隔転移を有する大腸癌に対して術前化学療法を施行した症例において,分子標的治療薬(panitumumab)併用の有無による組織学的有効性と手術成績を比較検討する.
【対象と方法】当科で2015年4月から2022年4月までの間に,切除可能局所進行大腸癌あるいは切除可能な遠隔転移を有する大腸癌に対して,殺細胞性抗癌剤にpanitumumabを加えた症例とCAPOXで術前化学療法を施行した29例において,後方視的に手術成績を検討した.
【結果】分子標的治療薬を併用した症例は14例,併用しなかった症例は15例であった.性別はそれぞれ男性9例(64%),10例(67%)(p=1),年齢中央値は67.5歳,70歳(p=0.86)であった.結腸癌がそれぞれ5例(36%),6例(40%)(p=1),cStageIII以下が7例(50%),12例(80%)(p=0.12)であった.腹腔鏡手術はそれぞれ9例(64%),12例(80%)(p=0.43),他臓器合併切除例が5例(36%),4例(27%)(p=0.7)であった.術後入院日数はそれぞれ17.6,15.0(p=0.74),手術時間は430分,445分(p=0.95),出血量は333g,274g(p=0.91),術後合併症CD grade3以上の症例は0例,1例であった.Down stagingが得られた症例はそれぞれ0例,3例(p=0.22)で,組織学的治療効果がgrade2以上の症例は4例,4例(p=1)であった.術後再発を認めた症例はそれぞれ3例(21%),4例(27%)(p=1),死亡した症例は0例,1例であった.
【結語】
Panitumumabを術前化学療法に併用したことによる有効性はdown stagingと組織学的治療効果,術後再発率の観点からは明らかではなく,明らかな手術成績の差も認めなかった.