講演情報

[P10-1-3]腎移植後のステロイド内服中の結紮切除術後の難治性後出血に対して動脈塞栓術で対処した1例

仕垣 幸太郎1, 児島 和孝1, 平良 さやか2, 森田 光3 (1.大浜第一病院大腸肛門外科, 2.大浜第一病院看護部, 3.大浜第一病院放射線科)
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(はじめに)痔核に対する手術である結紮切除術は根治性が高いものの,後出血が懸念される術式である.(目的)今回我々は内外痔核に対して結紮切除術を施行した患者が長期ステロイド内服による組織脆弱により後出血を繰り返し動脈塞栓術で治療し得た1例を経験したので報告する.(症例)40歳代男性.10年以上前にIgA腎症の末期腎不全に対して透析導入となった.その後,腸骨窩生体腎移植を施行した.拒絶反応があり腎機能低下したためステロイドパルス療法を行い,同時期より下痢が頻回となり痔核が悪化し出血も多く認めるようになった.当院紹介の1ヶ月前より出血はさらに悪化し,RCC-LR合計8単位投与し当院へ治療目的に紹介となった.3時,7時,11時方向に巨大な4度内外痔核を認めた.出血量も多く早期に対処が必要と考え2週間後に入院の上,腰椎麻酔下に結紮切除術を行った.術後3日目に血液検査にてHb低下を認めRCC-LR6単位を投与した.術後11日目に後出血を認めRCC-L4単位投与しつつ焼灼止血を行った.術後12日目に再出血を認め,RCC-LR6単位,FFP4単位を投与し焼灼止血術を行った.翌日にRCC-LR6単位を追加投与した.術後20日目に再出血を認めた.徐々に腎機能も悪化し全身の浮腫も認めたため,治療方針を変更し,焼灼止血を行いつつ放射線科に動脈塞栓術を行っていただいた.(考察)結紮切除術後の晩期出血は,処理した根部からの動脈性の出血が多い.しかし,今回は腎移植後の長期ステロイド内服による組織脆弱に起因する静脈性出血を起こし繰り返す後出血に至った.直接的な治療としてはバルーン圧迫,内視鏡的結紮術,内視鏡的硬化療法,外科的結紮術,焼灼止血術などが挙げられるが,今回のように外科的対処で難渋する場合には動脈塞栓術も有効であると考えられる.塞栓術においては完全な閉塞ではなく,動脈のフローを落とすために粉砕した吸収性ゼラチンスポンジを散布することでこれを成し得ると考えられた.