講演情報
[VPD3-4]一般市中病院における複雑性虫垂炎に対する低侵襲治療
園田 寛道1, 伊藤 良1, 籔田 佳帆1, 箱崎 智樹1, 代永 和秀1, 田村 徳康1, 梅谷 直亨1, 武田 幸樹2, 山田 岳史3 (1.河北総合病院消化器外科, 2.日本医科大学武蔵小杉病院消化器外科, 3.日本医科大学付属病院消化器外科)
【はじめに】急性虫垂炎の標準治療は緊急手術であるが,一般市中病院では人員的制限から常に夜間緊急手術体制を組むことは困難である.また,複雑性虫垂炎に対する緊急手術は難易度が高く,時に回盲部切除など過大侵襲を伴う手術となることがある.当院は東京都杉並区の2次救急病院で,年間約8000台の救急車を応需しているが,本年4月から施行された働き方改革を見据えて昨年から常勤消化器外科医(スタッフ5名,専攻医2名)は当直に入らずオンコール体制としている.そのため,夜間,休日の虫垂炎症例は汎発性腹膜炎症例のみ緊急手術を行い,その他の症例は救急当直医が入院,抗菌薬投与を行い,平日の日勤帯に消化器外科が引き継いで治療を行う方針としている.急性虫垂炎に対する当院の基本治療方針は,単純性の場合は手術,複雑性の場合は抗菌薬投与,ドレナージによる膿瘍コントロール後の待機的腹腔鏡下虫垂切除(IA)である.40歳以上のIA症例では手術待機期間(約3ヶ月)に下部消化管内視鏡検査や腹部CT検査で腫瘍性病変の除外診断を行うようにしている.
【目的,方法】当院で2023年度に行った複雑性虫垂炎に対する手術成績について検討する.
【結果】102例の虫垂炎に対して手術を行った.内訳は単純性85例(83.3%),複雑性17例(16.7%)であり,全例腹腔鏡下手術で行った.夜間(21時以降)に手術を行ったのは汎発性腹膜炎を呈していた2例(2%)のみであった.複雑性17例中,10例にIAが,7例に緊急手術(EA)が行われていた.EAの手術成績はIAより有意に不良であった(手術時間(中央値120分 vs 59.5分,P<0.01),出血量(中央値10ml vs 1ml,P=0.05).また,IA群では術後合併症を認めなかったが,EA群では3例(42.9%)に術後合併症を認め,術後在院日数もEA群で有意に不良であった(中央値:9日vs 4日,P<0.01).
【結語】複雑性虫垂炎では可能な限りIAに持ち込むべきであると考えられた.発表においては,腹腔鏡下膿瘍ドレナージを行った半年後にIAを行い,良好な経過を辿った46歳女性の症例ビデオを提示し,膿瘍形成時に無理に根治手術を行わないことの重要性を強調させていただく.
【目的,方法】当院で2023年度に行った複雑性虫垂炎に対する手術成績について検討する.
【結果】102例の虫垂炎に対して手術を行った.内訳は単純性85例(83.3%),複雑性17例(16.7%)であり,全例腹腔鏡下手術で行った.夜間(21時以降)に手術を行ったのは汎発性腹膜炎を呈していた2例(2%)のみであった.複雑性17例中,10例にIAが,7例に緊急手術(EA)が行われていた.EAの手術成績はIAより有意に不良であった(手術時間(中央値120分 vs 59.5分,P<0.01),出血量(中央値10ml vs 1ml,P=0.05).また,IA群では術後合併症を認めなかったが,EA群では3例(42.9%)に術後合併症を認め,術後在院日数もEA群で有意に不良であった(中央値:9日vs 4日,P<0.01).
【結語】複雑性虫垂炎では可能な限りIAに持ち込むべきであると考えられた.発表においては,腹腔鏡下膿瘍ドレナージを行った半年後にIAを行い,良好な経過を辿った46歳女性の症例ビデオを提示し,膿瘍形成時に無理に根治手術を行わないことの重要性を強調させていただく.