講演情報
[P11-1-5]HIV感染症の治療に伴い病変が縮小した肛門周囲Bowen病の1例
新谷 裕美子, 古川 聡美, 操 佑樹, 中林 瑠美, 工代 哲也, 井上 英美, 大城 泰平, 西尾 梨沙, 岡本 欣也, 山名 哲郎 (JCHO東京山手メディカルセンター,大腸肛門病センター)
症例は41歳男性,X-10年肛門内外の尖圭コンジローマに対する精査加療目的に当科を紹介受診した.術前検査でHIV抗体陽性と判明したが,CD4陽性リンパ球数787/mm3と維持されていたため抗HIV療法は導入せず,尖圭コンジローマに対し腰椎麻酔下に切除術を施行した.術中所見では,肛門周囲皮膚に乳頭状に隆起した疣贅部分とやや平坦な褐色の隆起部分が混在していた.病理診断の結果,尖圭コンジローマとBowen病が混在しており切除断端に癌成分を認めた.ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus;HPV)のsubtypeはLow risk HPVとHigh risk HPVの複数タイプが検出された.その後,通院自己中断を経て,X-5年に再発病変に対して2度目の切除術を施行した.病理診断結果では,Bowen病のみの診断であり,切除断端陽性であった.X-3年4月,CD4陽性リンパ球数354/mm3と低下を認め,抗HIV療法を開始した.肛門周囲Bowen病については,X-2年9月までに合計8回の切除術を施行しているが,X-1年10月に自然縮小を認めた.抗HIV療法は奏功し,X-1年8月(治療開始後28カ月)にはHIV RNA量が検出限界以下となった.
HIV感染者は肛門周囲のHPV感染率が高く,肛門周囲Bowen病のハイリスクグループである.治療は外科的切除が最も根治性が高いとされているが,断端に腫瘍細胞が残存しやすく局所再発が起こりやすい.外科的切除後の再発率は9~63%で,自然消退する場合もある.本症例についても,切除断端陽性となり再発を繰り返したが,抗HIV療法によりHIV RNA量が検出限界以下になった時期に,病変の自然縮小を認めた.抗HIV療法による免疫の回復が自然縮小に寄与した可能性があり,文献的考察を加えて報告する.
HIV感染者は肛門周囲のHPV感染率が高く,肛門周囲Bowen病のハイリスクグループである.治療は外科的切除が最も根治性が高いとされているが,断端に腫瘍細胞が残存しやすく局所再発が起こりやすい.外科的切除後の再発率は9~63%で,自然消退する場合もある.本症例についても,切除断端陽性となり再発を繰り返したが,抗HIV療法によりHIV RNA量が検出限界以下になった時期に,病変の自然縮小を認めた.抗HIV療法による免疫の回復が自然縮小に寄与した可能性があり,文献的考察を加えて報告する.