講演情報

[P23-1-3]当院における直腸脱に対する腹腔鏡下直腸前方固定術の短期成績

齋藤 裕人, 山本 大輔, 齊藤 浩志, 道傳 研太, 崎村 祐介, 辻 敏克, 森山 秀樹, 木下 淳, 稲木 紀幸 (金沢大学附属病院消化管外科)
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背景 直腸脱は,直腸が肛門管を越えて全層脱出しているために不快感,疼痛,出血,排便機能障害を引き起こし,QOLを著しく損なう疾患である.腹腔鏡下直腸後方固定術は,再発が少なく一般的に行われている術式であり我々も第一選択で行っていたが,術後の高度な便秘や直腸脱の再発を経験し,現在は腹腔鏡下直腸前方固定術(LVR:Laparoscopic ventral rectopexy)を行っている.今回我々は,直腸脱に対しLVRを行った症例を後方視的に検討したので報告する.
 方法 2022年1月-2024年4月まで当科において直腸脱に対しLVRを行った4例について検討した.手術手技:① 内側アプローチで岬角付近の直腸間膜右側から腹膜切開を開始する.② TMEの剥離層で剥離をすすめ,直腸左側の腹膜を切開し左右の剥離層を交通させる.③ 直腸後壁は肛門挙筋が露出するまで剥離する.④ 直腸側壁の剥離は,側方靭帯は切除せず温存する.⑤ 直腸前壁の剥離は直腸膣中隔/Denonvillier筋膜を骨盤底まで剥離する.⑥ 直腸前壁にメッシュを4針固定し十分頭側に牽引し,直腸脱が改善したことを確認し,プロタックにてメッシュを岬角に固定する.⑦ メッシュが腹腔に露出しないよう3-0 V-Loc連続縫合で腹膜を閉鎖する.
 結果 性別 男:女=1:3,手術時間:164分(156-260分),出血量:0g,入院期間中央値:8.5日(6-13)術後合併症(Clavien-Dindo分類grade 2以上):なし,便秘:なし,便失禁:1例,再発:なし,メッシュ露出などメッシュ関連の合併症なし.
 結語 LVRは直腸前壁にメッシュを固定し常時メッシュと接するため,比較的敬遠される術式である.4例と比較的少ない経験ではあるが重篤な合併症はなく,短い観察期間ではあるが再発は認めず,術後便秘を認めなかったが1例に便失禁を認めた.メッシュトラブル等の長期経過についてはまだ不明であり慎重な検討が必要であるが,直腸脱手術の第一選択になりうると考えられる.