講演情報

[P11-1-4]肛門梅毒の臨床的特徴

吉田 幸平1, 樽見 研2 (1.新宿おしりのクリニック, 2.樽見おしりとおなかのクリニック)
PDFダウンロードPDFダウンロード
梅毒は梅毒トレポネーマによる細菌性の性感染症で,世界中に広くみられる.
 日本では,梅毒の報告数は2019~2020年には減少したものの,2021年から再度増加傾向となり,2023年に診断された梅毒症例の報告数は14,906例となり過去最多となっている.
 大部分は感染者との粘膜の接触を伴う性行為や擬似性行為によって感染する.
 梅毒トレポネーマが粘膜や皮膚に侵入すると,典型的には数週間後に侵入箇所に初期硬結や硬性下疳がみられ,いずれも無痛性であることが多いと一般的に言われている.
しかし,肛門梅毒では,排便時痛を主訴に受診する患者も多く,また,肛門鏡での所見も裂肛に似ているため,裂肛と診断・治療され,梅毒の自然消退を裂肛の完治とされている患者がある一定数いると考えられる.
 肛門梅毒の特徴的な画像所見は硬性下疳であるが,通常の裂肛との違いは,びらんや白色粘液付着を伴っていることなど,裂肛の創よりもsharpさに欠ける見た目をしていることが多い.しかし,感染成立から1ヶ月以内の肛門梅毒は裂肛の創にしか見えないものもあるため,仮に裂肛として治療を開始したとしても,改善が乏しい場合や徐々に裂肛の見た目から硬性下疳様の見た目へ変化している可能性がある場合などは,梅毒を疑い,梅毒抗体検査することが重要である.
 1度梅毒を疑い梅毒抗体検査した結果,陰性となった場合でも,臨床所見と検査結果に乖離がある場合には,2~4週間後に再検することが大切である.
 また,画像所見以外では,1ヶ月以内の性交渉歴,同性間性交渉歴,性産業従事歴,鼠径リンパ節腫脹なども参考になる.
 私のクリニックは世界屈指のLGBTQ タウンと言われる新宿2丁目に位置しており,また,日本三大歓楽街である歌舞伎町も近いため梅毒の患者が潜在的に多い場所である.そのため,日々の外来で梅毒を見逃さぬよう研鑽を積んでいる.
 今回,自験の肛門所見画像を供覧しながら,肛門梅毒の特徴について私の経験を踏まえ解説する.