講演情報

[P4-1-6]腹腔鏡下左側横行結腸癌手術における術前CTAでリンパ節郭清範囲を決定した結腸部分切除術の検討

山岸 茂, 千田 圭悟, 堀 達彦, 伊藤 慧, 本田 祥子 (藤沢市民病院外科)
PDFダウンロードPDFダウンロード
背景:画像診断の進歩により,術前3D-CT Angiography(CTA)で腫瘍支配血管の特定や,術中リアルタイムにリンパ流を観察することが可能となってきた.標準的な左側横行結腸癌に対するリンパ節郭清範囲は結腸左半切除術(LHC)だが,実際は腫瘍支配血管を考慮した結腸部分切除術(PC)が行われていると思われる.
 目的:腹腔鏡下左側横行結腸癌手術における術前CTAでリンパ節郭清範囲を決定したPCの治療成績を検討する.
 対象:2012年9月から2021年3月までの間に,左側横行結腸癌に対して術前CTAでシミュレーションし腹腔鏡下で原発巣切除術を施行した60例を対象とした.
 方法:下部内視鏡検査で腫瘍下縁にクリップを留置し,これを指標に術前CTAで腫瘍支配血管を特定し,大腸癌取り扱い規約に則りリンパ節郭清範囲を決定した.LHCは,中結腸動脈(MCA)および左結腸動脈(LCA)が支配血管で,2領域のリンパ節郭清を必要とする症例に施行した.PCは,支配血管の走行からMCA領域,LCA領域それぞれの領域リンパ節のみを郭清することとし,これらの治療成績を比較検討した.
 結果:術前CTAにより腫瘍支配血管は全例で特定された.LHCは9例(15%)で,PCは51例(85%)だった.治療成績の比較では,PCで手術時間中央値が短く(PC 247分 vs LHC 295,p=0.031),術中出血量中央値は少なかった(PC 15g vs LHC 50,p=0.022).術後合併症に差はなかった(PC 15.7% vs LHC 25.0,p=0.613).郭清リンパ節個数中央値は,PCの方が少なかったが(PC 17個 vs LHC 36,p=0.011),リンパ節転移の個数中央値には差はなかった(PC 0個 vs LHC 0,p=0.353).観察期間中央値61.1ヵ月で,3年DFS(PC88.2% vs LHC100%,P=0.298)および3年OS(98.0% vs 88.9%,P=0.881)に有意差はなかった.
 結論:術前CTAでリンパ節郭清範囲を決定したPCは,短期成績が良好であり,腹腔鏡下左側横行結腸癌手術における術式の選択肢のひとつと考えられた.