講演情報

[P1-2-3]クローン病のストマ再造設後でストマ周囲の皮下脂肪肥厚によりストマ管理が困難なため腹部余剰皮膚,皮下脂肪切除術+皮弁形成術を施行した一例

工代 哲也, 古川 聡美, 新谷 裕美子, 操 佑樹, 中林 瑠美, 井上 英美, 大城 泰平, 西尾 梨沙, 岡本 欣也, 山名 哲郎 (東京山手メディカルセンター大腸・肛門外科)
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症例は48歳女性.2005年に下痢,心窩部痛で発症し,2006年に小腸大腸型クローン病と診断された.クローン病発症前は体重が100kg以上であった.2007年4月インフリキシマブを導入するも改善に乏しく,2009年4月に小腸部分切除+結腸亜全摘術を施行.2011年アダリムマブに変更.2012年3月,回結腸吻合部狭窄,肛門病変に対して直腸切断術+回腸ストマ造設術を施行した.2017年5月には回腸部分切除+回腸ストマ再造設を施行した.2022年に正中創瘢痕から排膿があり,CTで腹壁直下に膿瘍形成を認めたため,2022年9月ストマ近傍の回腸部分切除とストマ再造設術を施行した.術中,ストマを挙上していた腸管とその近傍の病変は切除できたが,口側の腸管が腹壁に強固に癒着しており,剥離が困難であった.対側にストマ造設の予定であったが,癒着のため距離が不足していたことと,ストマ周囲の皮膚には感染がなかったことから,元の部位にストマ再造設の方針とした.ストマは腸間膜が炎症により硬く肥厚していたため腸管粘膜の反転が不十分となり,また腹壁の脂肪が厚かったためにストマの高さが出なかった.術後経過は良好であったが,ストマパウチが剝がれやすく,1日1回のパウチ交換のまま退院した.手術時体重は63kgであったが,過去の肥満のため腹部に著名な余剰皮膚と皮下脂肪肥厚があり,座位でストマ周囲に皮膚が垂れ込む変形をきたし,パウチが剥がれるためストマ周囲の皮膚炎が悪化.QOLの著しい低下をおこした.そのため2023年3月にストマ周囲の腹部余剰皮膚,皮下脂肪切除術+皮弁形成術を形成外科にて施行.術後,ストマ周囲の陥凹変形は改善しており,皮膚炎も全体的には軽快した.
 今回の症例は,ストマ再造設の際に腸管の腹腔外への挙上が困難でストマの高さが出ず,皮下脂肪肥厚もあるためにストマ陥凹の原因となった.ストマ再造設後に皮下脂肪切除術を行い,ストマ陥凹を改善させることにより,皮膚炎等のQOLが改善した症例を経験した.若干の文献的考察を加えて報告する.