講演情報

[O11-3]当院におけるRb直腸癌に対するロボット支援下手術と腹腔鏡下手術の比較・検討

天海 博之, 外岡 亨, 早田 浩明, 成島 一夫, 千葉 聡, 加野 将之, 水藤 広, 磯崎 哲朗, 桑山 直樹, 鍋谷 圭宏 (千葉県がんセンター食道胃腸外科)
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【背景と目的】当院では2019年6月よりロボット支援下直腸手術が導入され,肛門温存や機能温存が期待されている.ロボット支援下手術の導入により当院の下部直腸癌手術に変化が起こったか後方視的に検討する.【対象と方法】2017年6月から2024年3月まで,当院同一術者によるRb直腸癌手術において,ロボット支援下手術41例と腹腔鏡下手術22例で,成績を比較検討した.【結果】背景は,ロボットvs腹腔鏡で比較すると,年齢中央値 67歳(35-85)vs 65歳(35-81)(p=0.630),性別(男性/女性)25/16例 vs 20/2例(p=0.018),BMI 中央値22.3 kg/m2(16.9-34.0)vs 23.9 kg/m2(18.6-30.6)(p=0.097),肛門縁からの距離中央値 5 cm(1-12)vs 4 cm(1-8)(p=0.012),腫瘍径中央値 39 mm(3-85)vs 55 mm(30-92)(p=0.0046),前治療(なし/化学療法/化学放射線療法)32/3/6 vs 19/3/0であった.術式(LAR/sLAR/ISR/APR)6/28/2/5例 vs 3/7/3/9例であった.肛門温存に関しては36例(87.8%)vs 13例(59.1%)とロボット支援下手術の方が有意に多かった(p=0.013).肛門温存例の肛門縁からの距離の中央値は5 cm(3-12)vs 4 cm(3-8)で有意差は認めなかった(p=0.080).側方郭清(LD0/LD2)30/11 vs 13/9(p=0.27)であった.側方郭清例を除いて手術時間や出血量を比較すると手術時間は中央値328分(220-528)vs 447分(301-577)(p=0.0015)と有意にロボット支援下手術の方が短かった.出血量は中央値17.5 g(3-450)vs 50 g(5-245)(p=0.010)と有意にロボット支援下手術の方が少なかった.合併症(Clavien DindoIII以上)は,6例(15%)vs 5例(23%)(p=0.49),主な合併症は,縫合不全1例(2.4%)vs 0例(0%),腸閉塞3例(7.3%)vs 4例(18%),排尿障害 1例(2.4%)vs 0例(0%)であった.【結語】当院のロボット支援下直腸癌手術は,腹腔鏡下直腸癌手術比べて出血量や手術時間の点で有利であった可能性がある.肛門温存に関しては,肛門縁からの距離がややロボット支援下手術の方が長いという背景のもとではあったが,ロボット支援下手術の方が有意に肛門温存が多かった.重篤な合併症に関しても差を認めず,安全なロボット支援下直腸手術の導入が可能であった.