講演情報

[VPD2-3]当科における,一時的回腸人工肛門造設術の工夫について

須藤 剛, 本荘 美菜子, 安田 英弘, 榎田 会生, 渡部 雅崇, 半沢 光, 内藤 覚, 佐藤 圭佑, 深瀬 正彦, 飯澤 肇 (山形県立中央病院外科)
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はじめに:直腸癌の根治手術はロボット手術などの普及により超低位前方切除術(SLAR)やIntersphincteric resection(ISR)による肛門温存手術の割合が増加するとともに,一時的双孔式人工肛門造設(一時的ストーマ)患者数も増加している.術後化学療法など患者さんのQOLを考えると管理しやすいストーマ造設が必要である.当院での合併症低減に向けたストーマ造設術について検討した.
対象と方法:2018年~22年に大腸癌手術施行1264例中一時的回腸ストーマを造設した直腸癌144例を対象とし,ストーマ関連合併症と造設術について検討した.
 結果:性別:男性89例,女性55例,術式:LAR14例,SLAR71例,ISR59例.到達法:開腹103例,腹腔鏡41例.閉鎖までの期間は201日(57-549日).ストーマ関連合併症:ストーマ部感染0例,粘膜皮膚離開(2.8%)Gra1 2例,Gra2 2例(化学療法施行例),傍ヘルニア(2.8%)Gra1 2例Gra2 2例(体重増加によりベルト使用),ストーマ脱出(1.4%)Gra1 2例であった.
 ストーマ造設術.待機的,緊急手術問わず,WOCN又はストーマ認定医によりCleaveland Clinicの原則に従い左右下腹部にマーキングを施行する.回腸末端より約20cm口側回腸の腸間膜に3Frネラトンカテーテルを通しペアン鉗子にて把持.予定部位に約3cmの縦方向の皮切を入れ,ストーマの屈曲を起こさないように腹壁に垂直になるよう脂肪,腹直筋前鞘も縦方向に切開.傍ヘルニアを起こさないように腹直筋を鈍的に繊維方向に分け,下腹壁動静脈の損傷に注意し後鞘と腹膜を縦方向に皮切より上下5mm程大きく切開(約2横指).ペアン鉗子をストーマ孔より通し,ネラトンを把持し腸管を高さ2cm程に引き出す.口側腸管が頭側になるようにネラトン把持部が頭側:尾側が7:3となるよう3-0バイクリルプラス2針にて皮膚にブリッジ(感染,脱落,脱出予防).4-0バイクリルで皮下と腸管漿膜筋層に4方向固定,腸管を縦方向に約2cm電気メスにて切開(排泄側を高くなるように).計8方向皮膚と腸管全層を固定し終了.
まとめ:ストーマ合併症は管理及び造設の両面の工夫が必要であるが,今後は,更にチームによる介入を増やして患者さんのQOLを保つようにしていく.