講演情報

[P16-2-3]COVID-19ワクチン接種後に発症したTrisomy8を伴う腸管型ベーチェット病に対し早期の外科的介入が有効であった一例

上山 聡仁1, 佐藤 純人1, 雪嶋 俊考2, 大村 晋一郎2, 光定 健太3, 斎藤 保隆3, 恩田 禎子3, 辰己 諒3, 植田 浩太3, 神戸 勝世3, 植田 江莉3, 吉岡 義朗3, 浜野 孝1, 小林 靖幸1, 鈴木 一史3 (1.聖隷浜松病院大腸肛門外科, 2.聖隷浜松病院膠原病リウマチ内科, 3.聖隷浜松病院外科)
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【背景】
ベーチェット病は,臨床症状の主症状および副症状の組み合わせにより診断され,副症状である腸管症状を主とするものは腸管型ベーチェット病と呼称される.また発症年齢のピークは30代であり高齢での発症はめずらしい.常染色体の数的異常であるTrisomy8を合併したベーチェット病は,消化管病変を合併しやすく腸管型ベーチェット病と診断されることが多く,内科的治療に抵抗性を示すことも報告されている.今回,COVID-19ワクチン接種後に発症し,免疫抑制剤や血管内治療など内科的治療に不応であったTrisomy8を伴う腸管型ベーチェット病に対し外科的治療が奏効した症例を経験したため報告する.
【症例】
76歳男性.COVID-19ワクチンを接種後にTrisomy8を伴うベーチェット病を発病した.下血を主訴に救急外来受診し,ベーチェット病に伴う回盲部潰瘍からの出血の診断にて輸血,ステロイド剤,免疫抑制剤,TNF阻害剤を投与した.循環血液量減少性ショックも併発したため,血管内コイル塞栓術も施行した.しかしながら出血のコントロールが不良で血圧の維持のために大量の輸血を必要としたことから回盲部切除術を施行した.潰瘍は回腸末端を中心に広範囲に存在し,可能な限り回腸を温存し施行した.術後は出血のコントロールが可能となり,ステロイド剤,免疫抑制剤,TNF阻害剤への反応性も改善を認めた.経口摂取も可能となり退院となった.
【考察】
ベーチェット病の発症とCOVID-19ワクチン接種との関連やTrisomy8の発現意義は不明だが,本症例のような背景を有し高齢で発症する腸管型ベーチェット病は非常にまれである.下血については,近年血管内治療や内視鏡治療の進歩が目覚ましく,内科的治療で出血をコントロールできた報告もあるが,今回は早期に外科的に介入したことで,その後内科的治療を効果的に実施することができた.COVID-19ワクチン接種やTrisomy8との関連性,本症例も含め外科的治療が有効であった腸管型ベーチェット病について文献的考察を加えて報告する.