講演情報

[PD8-3]腹膜播種を伴うStage IV大腸癌に対する腹腔内パクリタキセル併用療法

室野 浩司, 野澤 宏彰, 佐々木 和人, 江本 成伸, 金子 建介, 松崎 裕幸, 横山 雄一郎, 永井 雄三, 阿部 真也, 品川 貴秀, 舘川 裕一, 岡田 聡, 石原 聡一郎 (東京大学腫瘍外科)
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【目的】腹膜播種を伴うStage IV大腸癌は,P1,P2症例であれば手術による切除が推奨されているが,実際には広範囲に広がっていて切除できないことも多い.限られた施設においては減量手術+腹腔内温熱化学療法により治療を行うが,保険収載されていないことや小腸間膜などに広範囲に広がった腹膜播種には効果が乏しいといった問題点がある.
手術適応のない腹膜播種に対する標準的な治療は全身化学療法であるが,肝転移や肺転移と比較して化学療法は効果の乏しいことが知られている.卵巣癌や胃癌については腹腔内に化学療法を直接投与することの有効性が示されている.そこで,大腸癌腹膜播種に対してパクリタキセル腹腔内投与(ip PTX)の安全性と有効性の評価を行った.
【方法】腹膜播種を伴う大腸癌患者6名を対象とした.全身化学療法はmFOLFOX6/CAPOX+ベバシズマブとして,全身化学療法に加えてパクリタキセル20mg/m2/weekを腹腔内投与した.主要評価項目は安全性,副次評価項目は奏効率,PCI改善率,腹腔洗浄細胞診陰性化率とした.
【結果】mFOLFOX6群とCAPOX群の両群においてそれぞれGrade3の有害事象を66.7%に認めた.Grade4以上の有害事象は認めなかった.腹腔内カテーテル閉塞や感染など,カテーテル関連の有害事象も認めなかった.奏効率は25%でPCI改善率は50%であった.治療開始前は5症例で腹腔洗浄細胞診が陽性であったが,全症例で腹腔洗浄細胞診は陰性化した.無増悪生存期間の中央値は8.8か月で,生存期間中央値は29.3か月であった.
【結論】全身化学療法+腹腔内パクリタキセル併用療法の有害事象は全身化学療法のみにおける過去の報告と同等であり,腹腔内化学療法を行うことで有害事象が増加することはなかった.
 この結果をもとにパクリタキセル腹腔内投与併用療法の第II相試験(iPac-02試験)を医師主導治験として開始し,現在症例集積中である.Single armで主要評価項目は奏効割合,副次評価項目は無増悪生存期間,全生存期間,PCI改善率,安全性とした.本治験では切除不能な腹膜播種に症例を限定しているが,将来的には手術と組み合わせた治療についても検討していきたいと考えている.