講演情報

[PD5-12]直腸cT1b癌に対する内視鏡的局所切除法―PAEMとEFTR―

鴫田 賢次郎1, 松本 健太2, 朝山 直樹2, 青山 大輝2, 福本 晃1, 永田 信二2 (1.広島市立北部医療センター安佐市民病院内視鏡内科, 2.広島市立北部医療センター安佐市民病院消化器内科)
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【背景と目的】近年,直腸T1b癌に対して肛門機能温存を目的とした低侵襲治療が注目されているが,リンパ節転移リスク因子を評価するための病理組織診断や追加治療としての放射線化学療法には確実な局所切除が必須となる.また,高齢者や基礎疾患などで外科手術が高リスクである場合に姑息的な局所切除を選択する場合がある.そこで今回,当科で施行したPAEMと内視鏡的全層切除術(EFTR)の治療成績について報告する.
【方法】2024年1月までに,当科で直腸cT1b癌に対して内視鏡的局所切除を施行した44病変(ESD:20病変,PAEM:22病変,EFTR:2病変)を対象とした.内視鏡的局所切除法は,拡大観察に加えてEUSを施行し,粘膜下層の最深層が保たれる場合はESD,筋層に近接する場合は`PAEM,筋層浸潤が疑われる場合はEFTRを選択した.検討1)PAEMの治療成績を直腸cT1b癌に対して施行したESDの治療成績と比較検討した.検討2)EFTRの2例の治療詳細を検討した.
【結果】(検討1)年齢中央値(範囲):PAEM群70(35-87)歳,ESD群72(59-83)歳,腫瘍径中央値(範囲):PAEM群25(10-90)mm,ESD群35(5-90)mm,切除時間中央値(範囲):PAEM群58(30-160)分,ESD群60(15-210)分であった.一括切除率:PAEM群100%,ESD群95%,VM0切除率:PAEM群100%,ESD群82%であり,PAEM群でVM0切除率が有意に高かった(p<0.05).(検討2)症例1は88歳,男性.脳梗塞既往.直腸Rb径15mm大の0-IIa+IIc病変で外科手術拒否があり局所切除目的にEFTRを施行した.切除時間67分で一括切除し,全層切除後欠損部は経肛門的に外科的に全層縫合した.追加治療として放射線治療のみ施行した.症例2は79歳,男性.重症大動脈弁狭窄症,心筋梗塞後,脳梗塞後.クロピドグレル内服中.直腸Rb径20mm大の0-IIa+IIc病変.背景疾患より外科手術のリスクが高くEFTRを施行した.切除時間60分で一括切除し,全層切除後欠損部に対しては,内視鏡的手縫い縫合法(EHS)を施行した.
【結語】直腸cT1b癌に対する内視鏡的局所切除法としてPAEMはESDと比較してVM0切除率が有意に高かった.また局所根治を目指したEFTRは安全に施行可能であり,EHSを併用することでより低侵襲な手技が実施可能と考えられた.