講演情報

[SY1-5]手術症例からひも解く潰瘍性大腸炎関連腫瘍の特徴

品川 貴秀, 小松 更一, 岡田 聡, 舘川 裕一, 永井 雄三, 阿部 真也, 松崎 裕幸, 金子 建介, 横山 雄一郎, 江本 成伸, 室野 浩司, 佐々木 和人, 野澤 宏彰, 石原 聡一郎 (東京大学腫瘍外科)
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【背景・目的】潰瘍性大腸炎関連腫瘍(UC associated neoplasm:UCAN)は散発性大腸腫瘍と異なり視認困難な病変も多く,病変が多発することもあるため,術前未指摘の病変が術後診断されることも少なくない.そのため治療は大腸全摘術が基本とされ,内視鏡治療を含めた局所切除の適応は慎重に判断する必要がある.そこで今回,手術治療を行ったUCANの臨床病理学的特徴について,手術検体を振り返り明らかにすることを目的として症例の解析を行った.
【対象・方法】2010~2023年に当科にて手術治療を行ったUCAN61症例を対象に患者背景と,術前診断された病変(術前診断病変)と術前未指摘で手術検体において術後診断された病変(術後診断病変)の臨床病理学的特徴を後ろ向きに比較解析した.
【結果】全61症例の内訳は男性42例(68.9%),手術時平均年齢52(±13.2)歳,平均罹病期間17.5(±9.9)年,全大腸炎型53例(86.9%)だった.初回術式は大腸全摘術55例(90.2%)(うちIPAA43例,TPC12例),IRA1例(1.6%),結腸亜全摘術3例(4.9%),ハルトマン手術2例(3.3%)で,55例(90.2%)が鏡視下手術(腹腔鏡下43例,ロボット支援下12例)で行われた.手術検体にて29例(47.5%)で2か所以上の多発病変を認め,20症例(32.8%)では術前未指摘の病変を認めた.病変数は計120か所で,術前診断病変は86病変(71.7%),術後診断病変は34病変(28.3%)だった.病変部位は術前診断病変で左側大腸(D/S/R)に多く(76病変(88.4%)対21病変(61.8%):p=0.0017),術後診断病変では右側にも多く分布していた.術後診断病変ではLow-gradeまたはHigh-grade dysplasiaが多かった(35病変(40.7%)対29病変(85.3%):p<0.001)が,深達度MP1病変,SS1病変の進行癌も認めた.一方術前診断病変ではdysplasiaの他はM/SM22病変(25.6%),MP6病変(7%),SS/A17病変(19.7%),SE6病変(7%)であった.
【結語】UCANに対する初回手術は多くが大腸全摘術であり,術前に診断されなかった多発病変の多くはdysplasiaだったが,進行病変の併存にも注意する必要がある.また術後右側大腸に確認される病変も少なくなく,右側にも注意した正確な病変評価が望まれる.