講演情報

[R15-5]当院における神経原性大腸機能障害患者に対する経肛門的洗腸療法の導入経験

朴 正勝1,2, 米田 直樹2, 杉本 聡2, 永井 健一2, 福地 成晃2 (1.大阪警察病院消化器外科, 2.独立行政法人地域医療機能推進機構星ヶ丘医療センター外科)
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【はじめに】
逆行性洗腸療法(transanal irrigation;TAI)は脊髄神経障害による排便障害に対して有効な治療法の一つである.当院では脊髄損傷を含め,多くの神経原性大腸機能障害(neurogenic bowel dysfunction;NBD)を有する患者を診療しており,2023年9月より治療の選択肢の一つとしてTAIを導入したため,その診療経験を報告する.
【対象と方法】
2023年9月から2024年2月の間に,NBDによる排便障害を主訴に当科を受診された17例に関して,患者背景や排便障害の程度,治療後の経過を後方視的に検討した.
【結果】
17例の内,男性が15例(88.2%),年齢中央は58歳(範囲:23-82),NBDスコア中央値は16(範囲:0-30),visual analogue scale(VAS)中央値は3(範囲:0-10)であった.原因疾患の内訳は,脊髄損傷が12例(70.5%),脊髄梗塞が2例(11.8%),転移性骨腫瘍が2例(11.8%),二分脊椎が1例(5.9%)であった.保存的加療にて排便状態の改善を認めた7例(41.2%)を除く,10例(58.8%)にTAIを導入した.TAIを導入した10例の内,8例が脊髄損傷患者,転移性骨腫瘍患者と二分脊椎患者が1例ずつであった.いずれの症例もTAI導入後1ヶ月以上経過しており,その継続率は80%(8例),TAIを継続した8例はいずれも脊髄損傷患者であった.TAIを継続している8例において,治療前後のNBDスコア中央値は15(治療前)→5.5(治療後),VAS中央値は3(治療前)→8(治療後)であった.TAI導入後の経過中に直腸穿孔などの重篤な合併症を認めなかった.
【結語】
NBDを有する患者に対するTAIの導入経験を報告した.TAIはNBDによる排便障害に対して安全に導入でき,有効な治療法であった.