講演情報
[O15-2]pT1b大腸癌に対する外科切除施行例の長期予後
伊藤 慎吾1,2, 大島 由佳1, 白井 雄史1, 深澤 麻希1, 石井 淳1, 石川 健二1 (1.池上総合病院外科, 2.湘南鎌倉総合病院外科)
【背景】T1b大腸癌に対する治療の原則はリンパ節郭清を伴う腸切除であるが,リンパ節転移率はT1大腸癌全体でも約10%程度と報告されており,手術が生命予後を延長するかの明確なデータはない.【目的】当科において外科治療を施行したpT1b大腸癌の長期予後について検証する.【対象と方法】2012年から2021年までの期間に当科でリンパ節郭清を伴う外科的治療を施行した大腸癌患者1200例のうちpT1b大腸癌133例を対象とし,臨床病理学的因子,予後を後方視的に検討し手術の妥当性について検証した.多発癌の症例は除外した.【結果】年齢中央値は67(35-96)歳,男性81例,女性52例,ASAは各々1:34,2:81,3:19であった.腫瘍の局在は結腸84例,直腸49例,術前の内視鏡治療あり59例,なし74例であった.手術アプローチは腹腔鏡125例,開腹8例で,腹腔鏡から開腹手術への移行例は認めなかった.CD grade II以上の術後合併症を19例に認めた.郭清リンパ節個数は11(1-43)個,術後在院日数は9(7-48)日であった.組織型はtub1,2:129例,por:4例で,リンパ節転移は12例(9.0%)に認めた.長期予後に関わる因子について多変量解析を行ったところ,リンパ節転移を認めた症例には有意差を認めなかった.ASA 3,組織型por,術後合併症が独立した予後因子であった(p<0.01).【考察】ASA 3,術後合併症の症例は,以前から予後不良因子として報告されているが,T1b症例でも予後不良因子となっていた.大腸癌患者の年齢が高くなり,手術時の併存疾患が増えることでASAや術後合併症のリスクが増加することが懸念される.【結語】周術期のリスクを考慮し長期予後を見据えた症例毎の外科手術治療の選択が必要である.