講演情報
[P5-1-6]馬蹄腎を伴う大腸癌に対し腹腔鏡下手術を施行した2例
佐々木 邦明, 澄川 宗祐, 久須美 貴哉 (恵佑会札幌病院消化器外科)
症例1は70歳代女性.右下腹部痛の精査で上行結腸癌の診断となった.臨床診断cT4aN1bM0,StageIIIbで手術の方針とした.腹部CT検査で馬蹄腎を認めた.尿管および腎盂は外側に向き,尿管は腎前方から外側のまま下行した.馬蹄腎は腹側に張り出し後腹膜を押し上げていた.腹腔鏡下回盲部切除術,D3郭清を施行した.通常通りIMV左縁まで郭清し回結腸血管を処理した.右腎から峡部により後腹膜は隆起し,十二指腸および結腸間膜を押し上げた状態であったが,通常通り結腸間膜と後腹膜間の剥離を行うことが可能であった.腎盂尿管は腎の腹側外側に確認し,尿管は通常よりも外側を走行していた.術後は良好に経過し第10病日退院した.症例2は60歳代男性.腹痛で発症し,S状結腸癌による腸閉塞と診断されステント挿入の状態で紹介受診した.臨床診断cT4aN1bM0,StageIIIbで手術の方針とした.腹部CT検査にて馬蹄腎を認め,左尿管および腎盂は前外側にむき,症例1と同様の走行を示した.IMAは峡部のすぐ頭側に位置していた.またIMAの尾側で大動脈から峡部に流入する過剰腎動脈を認めた.腹腔鏡下S状結腸切除,D3郭清を施行した.IMA根部は腎に囲まれており,馬蹄腎峡部の前面で郭清を行う状態であった.尿管は前方外側に位置していた.腸間膜背側は後腹膜前面の層での剥離を継続し通常の授動が可能であった.術後は良好に経過し第7病日退院した.
馬蹄腎を伴う大腸癌手術を行う際,馬蹄腎による後腹膜の挙上や腎盂尿管が腎前方外側を向く走行異常に留意し,損傷を起こさない手術操作を行う必要がある.右側では十二指腸の腹側への変位,左側では腎峡部とIMA根部リンパ節との関係も留意されると考えられた.馬蹄腎を伴う大腸癌症例を経験した.文献的考察を含め,報告する.
馬蹄腎を伴う大腸癌手術を行う際,馬蹄腎による後腹膜の挙上や腎盂尿管が腎前方外側を向く走行異常に留意し,損傷を起こさない手術操作を行う必要がある.右側では十二指腸の腹側への変位,左側では腎峡部とIMA根部リンパ節との関係も留意されると考えられた.馬蹄腎を伴う大腸癌症例を経験した.文献的考察を含め,報告する.