講演情報

[O17-7]高齢者の人工肛門管理

金澤 伸郎1, 野島 陽子2, 三井 秀雄1 (1.東京都健康長寿医療センター外科, 2.東京都健康長寿医療センター看護部)
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人工肛門を巡っては,原因疾患,認知症の有無,一時的か永久か,年齢,造設してからの管理,経済的な問題など様々な要因が関与している.当センターの症例は高齢者が多いこともあり,認知症の患者も少なくない.【目的】人工肛門を造設した患者に関し,その管理における実態と,課題について検討する.【方法】過去16年間に当センターで人工肛門が造設された患者について検討した.【結果】永久人工肛門は203例(48-98歳,平均79.1歳)に造設されており,原因疾患は悪性が128例,良性が75例だった.悪性疾患128例中,人工肛門造設のみが62例,非根治切除術が19例,根治切除術が47例になされており,各々の生存日数中央値は144日,418日,922日だった.一方良性疾患では生存日数中央値は154日だった.一時的人工肛門は悪性疾患の19例,良性疾患の13例に施行されており,閉鎖までの日数(中央値)は,悪性疾患の減圧目的で21日,悪性疾患のcovering目的で300日,良性疾患で208日だった.転院,死亡などを除きストーマ外来で経過観察出来たのは92名であり,48名(48-90歳,平均74.3歳)が完全自己管理可能であり,自己管理困難であった29名(68-98歳,平均83.7歳)と比べて有意に若かった.緊急手術33例中,最高齢90歳を含む16例が完全自己管理可能であり,一部介助も含めると,21名が自己管理可能であった.又,認知症症例のうち,ストーマ外来で診察できた20名中9名が自己管理可能であった.【結論】高齢で切除不能な悪性疾患でも,人工肛門造設術のみで5か月近くの生存が見込まれ,一時的人工肛門であっても,閉鎖までに数か月を要していた.癌の経過観察間は一般的に術後5年間であるが,人工肛門の管理は一生続く.また,加齢とともに,手の巧緻性なども落ち,それまで出来ていた管理が難しくなってくることは容易に想像がつく事態であり,認知症患者対応を含め,皮膚・排泄ケア認定看護師や地域の医療従事者と緊密に連携を取ることのできる体系を構築することにより,きめ細かな医療を提供できるものと考える.