講演情報
[VPD3-5]当施設における下部消化管緊急症例に対する腹腔鏡下大腸手術
近藤 圭策, 天上 俊之, 河合 功, 波多邊 繁, 中田 英二 (鳳胃腸病院外科)
【はじめに】近年,大腸疾患に対する低侵襲手術としての腹腔鏡下手術は飛躍的に普及している.当施設では大腸癌をはじめとした待機手術に対して,大半を腹腔鏡下手術で行っている.また外科手術を要する下部消化管緊急症例に対しても,積極的に腹腔鏡下手術を施行している.今回下部消化管緊急手術の実際のビデオを示し,かつ我々の治療方針の妥当性について検証する.【対象と方法】2017年1月から2024年4月の間,当施設で下部消化管緊急症例に対して腹腔鏡下大腸手術を行った42例を対象とする.これらに対して後方視的に術後成績を検討し,我々の治療方針の妥当性について検証する.【結果】性別は,男性/女性,24/18であった.年齢中央値は,60歳(17-96歳)であった.原因疾患は,憩室関連(腫瘤形成,狭窄,穿孔,出血)16例,複雑性虫垂炎 13例,大腸内視鏡関連トラブル(ESD後穿孔,観察後穿孔)4例,クローン病(狭窄,腫瘤形成)3例,S状結腸捻転 3例,閉塞性大腸癌1例,腫瘍による腸重積1例,虫垂粘液腫瘍による膿瘍形成 1例であった.術式は,S状結腸切除術 10例,ハルトマン手術 3例,結腸左半切除術 4例,右結腸切除術(回盲部切除,結腸右半切除術を含む)19例,結腸部分切除5例,結腸全摘術 1例であった.開腹移行症例は,2例(4.8%)であった.手術時間中央値は163.5分(90-530分),術中出血量中央値は20ml(3-720ml)であった.Clavien-Dindo分類Grade III以上の合併症は1例(2.4%)であった.【まとめ】今回の検討では,大半の症例が良性疾患であった.近年,複雑性虫垂炎やHinchey IIの憩室炎に対しては,緊急手術を行わず,まず強力化学療法を行うことが多い.ただし保存的治療の不成功により,緊急手術を要した症例も一定数含まれていた.その際の手術は,高難度になることは言うまでもない.我々の手術成績は,概ね良好であった.施設による実績・経験・技術が伴っているならば,緊急症例に対しても腹腔鏡下大腸手術は安全に施行可能であり,有益なオプションであると考える.