講演情報
[P3-2-2]高齢者の局所進行直腸癌に対しTotal neoadjuvant therapyを施行し,ロボット支援手術により骨盤内臓全摘を回避できた1例
河野 眞吾, 井田 善文, 二木 修平, 白川 峻佑, 伊藤 謙, 山本 剛史, 行田 悠, 野呂 拓史, 渡野邉 郁雄, 町田 理夫, 須郷 広之 (順天堂練馬病院総合外科)
【背景】局所進行直腸癌において近年,欧米を中心にTotal neoadjuvant therapy(TNT)が行われ,良好な治療成績の可能性を示している.しかしながら,化学放射線治療に加えて化学療法を施行するため,診断から治療完治まで1年近い期間を要する治療であり,患者の肉体的・精神的・経済的な負担も少なくない.そのため,特に高齢者においてはむずかしいことも予想される.今回,われわれは高齢者の局所進行直腸癌に対しTNTを施行し,ロボット支援手術により骨盤内臓全摘を回避できた症例を経験したので報告する.【症例】80歳代の男性.前医で肛門縁から2cmにある進行直腸癌の診断で当院へ紹介となった.CT,MRIでは遠隔転移は認めなかったが,局所では精嚢,前立腺への浸潤を認めた.そのため,術前化学放射線療法(45Gy+TS1)を施行した.ある程度の縮小効果を認めたが,骨盤内臓全摘回避は困難と判断し,術前化学療法(CAPOX)を4コース施行した.ycT4b(前立腺)N0M0 ycStageIIの診断となり,今回,ロボット支援下腹会陰式直腸切断術,前立腺合併切除術施行した.消化器外科で直腸の後壁から側壁にかけての剥離操作を施行し,前壁のみ残し,会陰操作へ移動した.会陰操作施行時に泌尿器科で腹部操作を施行し,前立腺全摘と膀胱尿道吻合を施行した.手術時間は523分,術中出血量は347gで術中も合併症なく安全に施行された.術後経過良好で,尿道膀胱吻合も問題なく,術後12日目に自宅退院となった.術後1年5か月無再発生存中である.【結語】今回,われわれは高齢者の局所進行直腸癌に対しTNTを施行し,ロボット支援手術により骨盤内臓全摘を回避できた症例を経験したので,文献的な考察を加えて報告する.