講演情報
[R11-6]術前放射線療法後の直腸癌術後慢性期合併症に対する側方リンパ節郭清の影響について
松井 信平, 秋吉 高志, 野口 竜剛, 坂本 貴志, 向井 俊貴, 山口 智弘, 福長 洋介 (がん研究会有明病院)
【はじめに】進行下部直腸癌に対して,欧米では放射線療法を含んだ術前治療が標準治療となり,本邦でも臨床試験が複数行われているが,その晩期合併症の実態についても理解が重要であり,また,本邦独自の側方リンパ節郭清を附随して行うことで,それらの合併症発症にどのような影響があるかも要検討事項である.当院では,局所進行下部直腸癌に対して2004年から術前放射線療法(RT)を導入し,再発高リスク群に対しては術前化学療法(NAC)も併施している.また,側方リンパ節については,診断時,転移陽性と診断した側に対して,手術時に治療的郭清を施行している.
【対象】2009年から2019年に当院にて術前RTを施行し,根治切除を施行した,遠隔転移の無い下部直腸癌で,尿路変更・再建の伴わない根治手術を施行した651例について,術後90日以降の慢性期合併症について検討した.
【結果】対象は,男性429例,女性222例,手術時平均年齢は58.9歳であった.診断時,肛門縁からの腫瘍までの平均距離は4.19cm,予想深達度は,cT2以下/T3/T4:8例/545例/98例であった.術前治療として,短期RTを用いたのは108例(16.6%),NAC併施は223例(34.2%)だった.肛門温存手術は416例(63.9%)に,鏡視下手術は645例(99.1%)に施行されていた.側方リンパ節郭清は216例(33.2%)に施行されていた.術後切除検体で病理学的完全奏功を得られていたのは,106例(16.1%)であった.術後晩期合併症として主なものとして,腸閉塞:47例(7.2%),尿管狭窄による水腎症:20例(3.1%),瘻孔形成:11例(1.7%),有症状リンパ嚢胞:7例(1.1%)であった.また,肛門温存症例においては,一時的人工肛門閉鎖後の遅発性縫合不全:7例(1.7%)であった.
それらのうち,単変量・多変量解析にて側方リンパ節郭清が独立した規定因子であったものは,尿管狭窄による水腎症発症(HR=4.48,p=0.02)であった.
【結論】
術前RT後の根治切除後の慢性期合併症は独特な合併症に注意しながら経過観察することが肝要である.側方リンパ節郭清も施行すると,尿管狭窄発症に注意しながら術後管理を要すると考えられる.
【対象】2009年から2019年に当院にて術前RTを施行し,根治切除を施行した,遠隔転移の無い下部直腸癌で,尿路変更・再建の伴わない根治手術を施行した651例について,術後90日以降の慢性期合併症について検討した.
【結果】対象は,男性429例,女性222例,手術時平均年齢は58.9歳であった.診断時,肛門縁からの腫瘍までの平均距離は4.19cm,予想深達度は,cT2以下/T3/T4:8例/545例/98例であった.術前治療として,短期RTを用いたのは108例(16.6%),NAC併施は223例(34.2%)だった.肛門温存手術は416例(63.9%)に,鏡視下手術は645例(99.1%)に施行されていた.側方リンパ節郭清は216例(33.2%)に施行されていた.術後切除検体で病理学的完全奏功を得られていたのは,106例(16.1%)であった.術後晩期合併症として主なものとして,腸閉塞:47例(7.2%),尿管狭窄による水腎症:20例(3.1%),瘻孔形成:11例(1.7%),有症状リンパ嚢胞:7例(1.1%)であった.また,肛門温存症例においては,一時的人工肛門閉鎖後の遅発性縫合不全:7例(1.7%)であった.
それらのうち,単変量・多変量解析にて側方リンパ節郭清が独立した規定因子であったものは,尿管狭窄による水腎症発症(HR=4.48,p=0.02)であった.
【結論】
術前RT後の根治切除後の慢性期合併症は独特な合併症に注意しながら経過観察することが肝要である.側方リンパ節郭清も施行すると,尿管狭窄発症に注意しながら術後管理を要すると考えられる.