講演情報

[R3-3]直腸癌手術におけるICG蛍光法を用いた定量的血流評価の有用性

工藤 孝迪1, 渡邉 純1,2, 諏訪 雄亮1,2, 今西 康太1, 前橋 学1, 渥美 陽介1, 森 康一1, 沼田 正勝1, 中川 和也3, 小澤 真由美1, 諏訪 宏和4, 熊本 宣文1, 佐藤 勉1, 遠藤 格3 (1.横浜市立大学附属市民総合医療センター, 2.関西医科大学下部消化管外科学, 3.横浜市立大学附属病院, 4.横須賀共済病院)
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[背景]
 縫合不全減少への取り組みとして,ICGが用いられている.従来の定性的評価ではICG投与後から,腸管壁蛍光までの時間を指標としていたが,この方法は腸管壁が蛍光したタイミングは術者の主観によるため,今後定量的な血流評価が期待される.
 [対象・方法]
 2019年1月から2024年4月までに腹腔鏡及びロボット支援下直腸切除術を行った253例を対象とした.体腔外操作で腫瘍口側腸管を切離する直前にICG12.5 mgを静脈注射し,Stryker社のSPY-QP蛍光評価ソフトウェアシステムを用いて蛍光観察した.本システムでは蛍光部位を単色で表示するOverlayモードに加え,基準組織と比較した蛍光強度(%)の測定や,カラーマップディスプレイモードで蛍光強度を色別に可視化することが可能である.2021年11月までは従来の定性的なICG蛍光観察を行い,2021年12月以降はSPY-QP蛍光評価ソフトウェアシステムを導入し定量的なICG蛍光観察を行った.定性的評価群と定量的評価群の2群に分け,Propensity score matchingを行い,治療成績を比較検討した.
 [結果]
 定性的評価群92例,定量的評価群92例が抽出された.ICG蛍光評価における腸管切離予定線の変更は3例(3.3%)vs 9例(9.8%)(p=0.133)と定量的評価群でやや多かった.縫合不全発生率は6例(6.5%)vs 3例(3.3%)(p=0.497)と有意差は認めず,定量的評価群において,切離予定線の蛍光強度相対値は80[40-100]%であり,蛍光強度が安定するまでの時間は18[11-45]秒であった.切離予定線を変更した9例のうち6例は蛍光強度相対値の低下によるもので,従来の方法では蛍光不良を指摘できなかった.
 [結語]
 ICG蛍光法による定量的血流評価は,従来の方法では指摘できない血流不良域を同定することが可能であった.今後多数例での検討が必要である.