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[SR6-3]局所進行閉塞性左側大腸癌に対する術前化学療法を中心とした治療戦略の短期および長期成績についての検討―北海道内2施設での後ろ向き観察研究

今泉 健1, 吉田 雅1, 市川 伸樹1, 大野 陽介1, 柴田 賢吾1, 石塚 千紘1, 中西 一彰2, 笠島 浩行2, 下國 達志2, 武冨 紹信2 (1.北海道大学病院消化器外科1, 2.市立函館病院消化器外科)
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背景:閉塞性大腸癌は予後不良であり,治療成績の改善のためには術前化学療法は重要な治療選択の一つと考えられるが,その適応や減圧処置を含めた治療戦略に関してはいまだ定まっていない.
目的:局所進行閉塞性左側大腸癌に対する術前化学療法の短期および長期成績を明らかにする.
方法:2011年7月から2023年6月の期間で,北海道大学病院および市立函館病院にて,遠隔転移を有さないClinical T4の閉塞性左側大腸癌に対して減圧処置(減圧チューブ,ステント,ストマ造設)後の原発巣切除を行った47例を対象とした.減圧処置後の術前化学療法施行群(NAC群)11例と,非施行群(nonNAC群)36例にわけ,治療成績を比較検討した.
結果:患者背景の年齢・性差・ASA-PSには両群で有意差を認めなかった.NAC群で腫瘍局在が直腸(RS~Ra)およびClinical T4bの症例を多く認めた.cStageII/IIIの内訳には差は認めなかった.減圧処置の内訳は,NAC群がステント2例・ストマ造設9例,nonNAC群は減圧チューブ9例・ステント26例・ストマ造設1例で,群間には有意差を認めた.NAC群の術前治療のレジメンは,全例Doubletがベースとなっており,ストマを造設した9症例に対しては分子標的薬を併用したレジメンが施行されていた.術前化学療法中の減圧処置および治療薬剤に関連した重篤な有害事象は認めなかった.手術術式は,NAC群で他臓器合併切除が多く,手術時間が有意に長かった.術後のGrade 3以上の合併症発生率および術後の在院日数には差を認めなかった.病理組織学的効果判定では,Grade 2を3例(27.2%)に認めたが,pCRは認めなかった.R0切除率は,NAC群で100%,nonNAC群では95.2%であった.術後補助化学療法施行率はNAC群で81.8%,nonNAC群で72.2%であった.3年無再発生存率は,NAC群で81.8%・nonNAC群で59.4%(P=0.47),3年全生存率は,NAC群100%・nonNAC群86.5%(P=0.659)であった.
結論:局所進行閉塞性左側大腸癌に対する減圧処置後の術前化学療法は安全に施行可能であり,根治切除率および腫瘍学的な予後に寄与する可能性が示唆された.閉塞性大腸癌の治療戦略の一つになりうると考えられた.