講演情報
[P19-1-6]大腸癌術後補助化学療法中に発症した心原性失神の1例
内山 周一郎, 横山 剛 (横山病院外科)
近年大腸癌の増加に伴ってStageIII大腸癌に対する術後補助化学療法を行う症例が増えており,再発リスクの高い症例においてオキサリプラチン併用療法が主流となっている.さまざまな副作用対策を取りながら治療を行っているのが現状であるが,まれな副作用に遭遇することもある.今回術後補助化学療法中に発症した心原性失神の1例を経験したので報告する.症例は44歳男性で5年ほど前より虫垂炎と憩室炎を繰り返し保存的治療を行っていた.近医で施行した下部消化管内視鏡検査で虫垂開口部に半球状の腫瘍性病変を認め,生検で腺腫の診断であった.虫垂癌の可能性があるため当院紹介受診.基礎疾患として高血圧,糖尿病,脂質異常症に対して内服加療を受けているが,術前心電図で異常なく虚血性心疾患のエピソードもなかった.虫垂病変に対して腹腔鏡下回盲部切除術施行.最終組織診断で深達度SEの粘液癌で3個リンパ節転移を認めた.術後補助化学療法としてmFOLFOX6による治療を希望されたためCVポートを留置した.入院で化学療法を開始したが,オキサリプラチン投与7時間後,5-FU持続投与中に気分不良があり一過性に意識消失がみられた.すぐに意識レベルが改善したため化学療法を中止した.翌日循環器内科で心電図をみてもらったところ,薬剤性の洞不全が生じてアダムス・ストークス症候群による心原性失神となった可能性が考えられた.その後経口抗癌剤による術後補助化学療法を行っているが,失神発作は認めていない.オキサリプラチンによる副作用としてアダムス・ストークス症候群があげられているが頻度は不明となっている.これまで数例程度しか報告されていないとのことであるが,ほとんどが24時間以内にみられているため,特に初回投与時には本病態に十分留意する必要があると考えられた.