講演情報
[O7-3]当院における他臓器浸潤を伴う局所進行結腸癌に対する術前補助化学療法の治療成績
三宅 正和, 瀧口 暢生, 市川 善章, 東 重慶, 古川 陽菜, 大村 仁昭, 柏﨑 正樹, 柳 尚吾, 大賀 遥子, 種村 匡弘 (りんくう総合医療センター外科)
結腸癌に対する治療は切除可能であれば切除+補助化学療法が標準治療である.ガイドラインにおいても結腸癌に対する術前治療についてはエビデンスがないことから推奨されていない.しかし,効果の期待できる化学療法レジメンの登場で術前に化学療法をおこなうことのメリットが他癌腫で示されている.結腸癌でもNeoadjuvant chemotherapy(NAC)の有効性を検討したFOxTROT試験において,1000例規模の試験では結果的に予想された術後2年再発率を有意に低下させるという結果は得られなかったが,NAC群でR0切除率の上昇を認めたため術前治療の可能性を示す試験と評価されている.当院では2022年から他臓器浸潤を認め切除断端が確保できないことが予想される症例においてNACをおこなっている.2022年から約2年間で7例の症例を経験した.男女比は5:2.年齢の中央値は76(46-82).BMIの中央値は20.3でASAはいずれも2であった.術前診断で,S状結腸癌が4例,下降結腸癌が1例,横行結腸癌が1例,上行結腸癌が1例であった.浸潤臓器は重複含み,膀胱が4例,小腸が2例,十二指腸が2例,肝が1例であった.NACのレジメンについてはXELOX+Bevが5例,XELOXIRI+Bevが1例,FOLFOXIRIが1例であった.治療効果判定においてPDであった症例はなく,いずれもPR以上で,縮小率の中央値は78.5%であった.手術において浸潤臓器を温存した症例は1例のみでいずれも術前浸潤と診断した臓器は合併切除した.手術は腹腔鏡手術が6例,開腹手術が1例で手術時間の中央値は388分で出血量の中央値は138mlであった.いずれもR0切除されており,組織学的治用効果判定は,grade1aが1例,1bが2例,2が3例,3が1例であった.また,術後補助化学療法を施行したのは3例であり,観察期間は短いものの再発は今のところ認めていない.症例は少ないものの当院で施行した症例はすべて効果を認め,合併症も認めなかった.直腸癌同様エビデンスの蓄積が望まれる.