講演情報

[P17-2-7]直腸癌により発症したフルニエ壊疽の1例

氏家 大輔1,2, 小野澤 寿志1,2, 坂本 渉2, 岡山 洋和2, 門馬 智之2, 河野 浩二2 (1.星総合病院, 2.福島県立医科大学消化管外科学講座)
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【緒言】フルニエ壊疽は会陰部を主体とする急性壊死性筋膜炎であり,時に急激な経過をたどり早期に治療を開始しなければ予後不良となる疾患である.肛門周囲膿瘍や痔瘻を契機とすることが多く,また基礎疾患として糖尿病などの易感染状態を伴うことが多い.今回我々は直腸癌を原因として発症したフルニエ壊疽の1例を経験したため発表する.【主訴】体動困難【現病歴】‐5病日ごろより体動困難となっていた.第0病日 救急要請され前医に搬送された.前医にて臀部に腫脹,水疱形成,悪臭あり,CTで同部位のガス像あり,臀部のガス壊疽・敗血症性ショックと診断された.集学的加療目的に,当院整形外科に紹介された.泌尿器科・当科にも紹介あり,CTにて直腸腫瘤を認め,直腸癌によるフルニエ壊疽の診断で当科での手術の方針となった.【既往歴】高血圧,貧血【生活歴】喫煙・飲酒歴なし.【身体所見】臀部発赤・腫脹あり.壊死の中心と思われる皮膚部分に黒い斑を認めた.【CT所見】臀部に広汎なガスを認め,膿瘍は肛門挙筋を越えて広がっていた.直腸に2型腫瘍を思わせる造影効果のある壁肥厚を認めた.【手術】左殿部の壊死している部分と思われる皮膚全体含むように切開した.壊死組織はできる限り電気メス,または用手的にデブリした.肛門はintactだった.直腸診を行うと,肛門入ってすぐに全周性の狭窄,直腸癌と思われる腫瘍を触知し,潰瘍底は菲薄化しており,今回の原因と考えられた.便による継続した汚染を防ぐためにS状結腸に人工肛門を造設し手術終了とした.【術後】術後経過は良好で,臀部の開放創も次第に改善していった.4か月後に直腸癌に対し腹会陰式直腸切断術を施行したが,前立腺剥離面で断端陽性となり術後から化学療法を施行している.現在も継続加療中である.【まとめ】直腸癌を契機に発見されるフルニエ壊疽は比較的まれである.若干の文献的考察をふまえて発表する.