講演情報

[VPD2-2]減圧チューブ留置によるoutlet obstructionの予防効果の検討 とDiverting ileostomy造設の工夫

外舘 幸敏1,2, 片方 雅紀1, 府野 琢実1, 河村 英恭1,2, 高野 祥直1, 本多 通孝1,2 (1.総合南東北病院, 2.福島県立医科大学低侵襲腫瘍制御学講座)
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【背景】近年,患者のQOL向上を目指して,肛門を温存する直腸手術が増加傾向にある.縫合不全の発生時の重症化を予防するために,Diverting ileostomy(DI)を造設する機会も多い.DI造設による問題点として,outlet obstruction(OO)の発生が報告されている.OOはDIが閉塞起点となり発症する腸閉塞と定義されており,OOの原因として,①腸管の浮腫,②腹壁での腸管屈曲,③ストマトンネルの狭窄が指摘されているが,その病態生理学的なメカニズムは不明な点が多い.OOを来した場合には診断と治療を兼ねて減圧チューブを留置する.当院では術直後からの減圧チューブ留置がOOの予防策として有効であると仮定し,2018年より執刀医の判断で観察的に予防的減圧チューブ留置を行った.2020年3月からは①,②の対策として,DI造設時に腹腔鏡ポートを利用した方法(PG法)を行っている.【目的】予防的減圧チューブ留置がOO予防として有効か検討するとともに,PG法の動画を供覧し,当院のOO発生予防に対しての取り組みを提示する.【対象と方法】2013年1月から2020年9月までに当院でDIを造設した症例について過去起点で検討し,予防的減圧チューブ留置した群(留置群)と留置しなかった群(非留置群)において主要評価項目をOO発生割合として検討した.【PG法】ストママーキング部から腹壁に対して垂直にポートを挿入.盲腸より口側40cmの回腸部間膜にチューブ通し,ポートから入れた鉗子でそのチューブを把持.ポートをまな板とし,筋膜・腹直筋・腹膜を真っ直ぐに切開.切開部からポートごと回腸を引き出し,回腸を腹壁に挙上.【結果】症例は計99例(留置群37例,非留置群62例).OOの発生割合は全体で24.2%(24例).留置群13.5%(5例),非留置群30.6%(19例)で有意差は認めなかった(P=0.154)が,非留置群にOOが多く発生していた.閉塞群(23例)は非閉塞群(67例)と比較し,男性が多く,腹壁厚が薄い傾向がみられた.PG法を用いてからのOO発生割合は6.7%(5/75例)であった.【結語】予防的減圧チューブ留置およびPG法はOOの予防策となりうる可能性が示唆された.OOの発生には複数の要素が絡んでいると考えられる.