講演情報

[PD3-9]結腸癌手術における体内デルタ吻合の手技の工夫と短期成績

岡田 倫明1, 上畑 恭平2, 稲本 将1, 野村 明成1 (1.大阪赤十字病院消化器外科, 2.京都大学消化管外科)
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【はじめに】
当科では,郭清範囲外の授動を最小限にでき,腸管・腸間膜切除マージンを確実に確保できる体内デルタ吻合を第一選択としている.巨大腫瘍や腸閉塞症例では体外吻合を適応としている.
【方法】
2020年1月から2023年10月に,体内デルタ吻合(ID)または体外機能的端々吻合(EF)を行った腹腔鏡下/ロボット支援下結腸癌手術(姑息切除,重複癌を除く)306例について短期成績を検討した.
【体内デルタ吻合の手技】
腸管吻合時に腸間膜の噛み込みを予防するために,切離予定部の腸管周囲脂肪をトリミングし腸管壁を露出する.腸管を切離した後に腸間膜側に挿入孔を作成し,便汁の漏出を避けるため挿入孔を腹側に持ち上げた状態を維持する.ステイプル先端で腸管壁を損傷しないよう,腸管後壁寄りにステイプルを45mm以上挿入して吻合する.共通孔を連続縫合で仮閉鎖し,糸の両端を牽引した状態で共通孔を閉鎖する.
【結果】
ID:EF群は126:180例であった.患者背景やTNM因子に有意差はなかった.体外吻合では広範囲な授動が必要とされる横行から下行結腸癌に対して体内吻合を導入したため,ID群で横行から下行結腸癌の割合が多かった(横行28%:18%,下行15%:12%).ロボット手術は46:0例(37:0%)とすべて体内吻合であった.手術時間は292:236分(p<0.01)とID群で有意に長く,出血量は0[0-150]:0[0-421]ml(P=0.01)とID群で有意に少なかった.口側(PM)・肛門側(DM)のマージンを10cm以上確保した症例は,虫垂から右側横行の腫瘍ではPM 88:82%,DM 87:81%,横行中央の腫瘍ではPM 75:71%,DM 83:57%,左側横行からS状の腫瘍ではPM 78:60%,DM 81:63%であり,ID群でマージンは確保できる傾向にあった.回盲部切除における肝彎曲部の授動や副右結腸静脈の切離,下行結腸癌手術での脾彎曲とSD junctionの双方の授動はID群でより低減できる傾向にあった.合併症(CD≥II)は,腸閉塞が2:1例,イレウス2:4例,吻合部出血2:0例であった.ID群の腸閉塞症例では吻合部狭窄と吻合部の屈曲による通過障害を認め再吻合手術を行った.
【結語】
体内デルタ吻合は出血が少なく,過不足のない授動範囲と切離腸管長を確保できる再建方法であると考えられた.今後は長期的な成績を検討することが課題である.