講演情報
[R7-6]ASA-PS3以上の高齢者に対する大腸癌手術の治療成績
田中 宗伸1, 小澤 真由美1, 工藤 孝迪2, 大矢 浩貴1, 前橋 学2, 鳥谷 健一郎3, 福岡 宏倫1, 太田 絵美4, 森 剛一2, 諏訪 雄亮2, 中川 和也1, 諏訪 宏和4, 渡邉 純2,5, 遠藤 格1 (1.横浜市立大学消化器腫瘍外科学, 2.横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター, 3.横浜市立大学附属市民総合医療センター炎症性腸疾患センター, 4.横須賀共済病院外科, 5.関西医科大学下部消化管外科学講座)
【背景】近年大腸癌罹患数の増加に伴い高齢者大腸癌手術も増加傾向にあるが,ASA-PS3以上の高齢者に対する手術の安全性に関しては明らかでない.
【目的】ASA-PS3以上の高齢者の大腸癌に対する手術治療成績を明らかにする.【方法】2012年1月から2023年12月に,当院および関連2施設において待機的手術を施行した80歳以上の高齢大腸癌手術患者のうち遠隔転移病変の同時手術症例,他手術併施症例,姑息的手術症例,特殊組織型の症例を除外した症例は587例であった.587例のうちASA-PS3以上の症例は84例(14.3%)であった.84例の手術成績の現状を示すとともに,587例の中から年齢,性別,BMI,PNI-score,腫瘍局在,pStageを因子とし傾向スコアマッチングを行いASA-PS3,4の高リスク群;H群とASA-PS1,2の低リスク群;L群を比較検討した.【結果】H群は84例,L群は503例であった.H群の年齢中央値は84(81-86)歳であり,男女比は51:33であった.結腸癌58例,直腸癌26例で,74例(88%)に吻合を伴う原発切除術が施行され,divertingstomaは6例で造設されていた.73例(87%)に腹腔鏡もしくはロボット手術が施行されていた.手術時間177.5(152-252)分,出血量10(0-50)g,Clavien-Dindo分類GradeII以上の合併症は25例(29%),縫合不全は0例,術後平均在院日数は9(6-14)日であった.傾向スコアマッチングにより両群ともに81例抽出された.H群はL群と比較して,心疾患(39例vs18例,p=0.001)が多く,糖尿病(28例vs20例,p=0.228),高血圧(58例vs53例,p=0.499)に有意差はなかった.術式や腫瘍学的背景に差は認めなかった.手術時間(H群;196分vsL群;222分,p=0.040)はH群で短い傾向であり,D0-1郭清(14例vs3例,p=0.009)と縮小郭清傾向にあったが,根治度R0症例数(75例vs75例,p=1.00)は差が無かった.出血量(65gvs182g,p=0.287)に差はなく,術後合併症発生率(CD≥2,23例vs19例,p=0.591),縫合不全発生数(CD≥2,0例vs4例,p=0.120)においても差は認めず,手術関連死亡症例は両群ともに認めなかった.【結論】ASA-PS3以上のハイリスク高齢患者大腸癌症例に対しての手術は,郭清範囲の縮小により手術時間は短い傾向にあり,合併症を増加させることなく安全に施行し得ていた.今後,遠隔成績の評価が必要である.
【目的】ASA-PS3以上の高齢者の大腸癌に対する手術治療成績を明らかにする.【方法】2012年1月から2023年12月に,当院および関連2施設において待機的手術を施行した80歳以上の高齢大腸癌手術患者のうち遠隔転移病変の同時手術症例,他手術併施症例,姑息的手術症例,特殊組織型の症例を除外した症例は587例であった.587例のうちASA-PS3以上の症例は84例(14.3%)であった.84例の手術成績の現状を示すとともに,587例の中から年齢,性別,BMI,PNI-score,腫瘍局在,pStageを因子とし傾向スコアマッチングを行いASA-PS3,4の高リスク群;H群とASA-PS1,2の低リスク群;L群を比較検討した.【結果】H群は84例,L群は503例であった.H群の年齢中央値は84(81-86)歳であり,男女比は51:33であった.結腸癌58例,直腸癌26例で,74例(88%)に吻合を伴う原発切除術が施行され,divertingstomaは6例で造設されていた.73例(87%)に腹腔鏡もしくはロボット手術が施行されていた.手術時間177.5(152-252)分,出血量10(0-50)g,Clavien-Dindo分類GradeII以上の合併症は25例(29%),縫合不全は0例,術後平均在院日数は9(6-14)日であった.傾向スコアマッチングにより両群ともに81例抽出された.H群はL群と比較して,心疾患(39例vs18例,p=0.001)が多く,糖尿病(28例vs20例,p=0.228),高血圧(58例vs53例,p=0.499)に有意差はなかった.術式や腫瘍学的背景に差は認めなかった.手術時間(H群;196分vsL群;222分,p=0.040)はH群で短い傾向であり,D0-1郭清(14例vs3例,p=0.009)と縮小郭清傾向にあったが,根治度R0症例数(75例vs75例,p=1.00)は差が無かった.出血量(65gvs182g,p=0.287)に差はなく,術後合併症発生率(CD≥2,23例vs19例,p=0.591),縫合不全発生数(CD≥2,0例vs4例,p=0.120)においても差は認めず,手術関連死亡症例は両群ともに認めなかった.【結論】ASA-PS3以上のハイリスク高齢患者大腸癌症例に対しての手術は,郭清範囲の縮小により手術時間は短い傾向にあり,合併症を増加させることなく安全に施行し得ていた.今後,遠隔成績の評価が必要である.