講演情報

[VPD2-6]Tip-Up鉗子を用いたロボット支援下直腸癌手術での後腹膜経路ストーマ造設手技の工夫と治療成績

赤本 伸太郎, 大西 一穂 (住友別子病院外科)
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【背景】S状結腸単孔式ストーマ造設においては,傍ストーマヘルニア予防のために後腹膜経路でのストーマ造設が望ましいとされているが,手技は煩雑となる.当院ではTip-Up鉗子を用いて体腔内から後腹膜トンネリングを行う手技を以前から報告してきている.
【目的】当院でのS状結腸永久ストーマ造設手技と治療成績を提示供覧する.
【対象】2019年2月~2024年4月までに施行したロボット支援下直腸癌手術177例のうち,S状結腸永久ストーマを作成した症例を33例認めた.そのうちS状結腸間膜の内臓脂肪過多で経腹腔経路を選択した4例を除外し,後腹膜経路でのストーマ造設を施行した29例を対象とした.
【方法】マーキングサイトは臍の創部からの滲出液での面板剥離を予防するため,腹直筋を貫く位置ではあるが,やや腹直筋の外側寄りとした.Inner tunnelの作成:ロボット手術の腹部パートが終了した時点でTip-Up鉗子を用いて腹腔内からストーマサイトマーキング部位に向かって腹膜前を約4cmの幅で鈍的に剥離すると腹直筋外縁近傍まで剥離が可能である.その後TMEを施行する.Outer tunnelの作成:標本摘出後,気腹下にマーキング部に円形の皮切をおき,前鞘を十字切開し,腹直筋を分けた後に後鞘の外側寄りを切開して用指的にinner tunnelと連続させて後腹膜トンネリングを完成させ,ケリー鉗子でS状結腸断端を挙上する.
【結果】29例の内訳は,男性/女性:4/15例,年齢の中央値は79歳(56-92),BMIは中央値で22.1(16.4-30.5),術式はハルトマン/APR/TPE:17/10/2例であった.Tip-Upでのinner tunnel作成に要した時間は135(90-335)秒であり,ロボット操作による剥離部のoozingでガーゼを詰めてからTMEを施行した症例を1例に認めた.本手技に特有の術後合併症は認めていない.術後観察期間の中央値は1年9ヶ月であり,CT画像または身体所見から傍ストーマヘルニアと診断した症例を3例(10.3%)に認めた.
【考察・結語】ロボット支援下にinner tunnelを作成し,outer tunnel作成時には後鞘をマーキング部の真下にではなく斜め外側方向に切開する当院での方法は簡便であり,傍ストーマヘルニアの発生頻度を減らし得る有用な方法と考える.