講演情報

[VWS2-9]ロボット支援下結腸癌手術におけるポート配置の工夫

横田 満, 細部 大貴, 松岡 弘也, 長久 吉雄, 稲村 幸雄, 河田 健二, 増井 俊彦, 岡部 道雄, 北川 裕久, 河本 和幸 (公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院)
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ロボット支援手術(RALS)の特徴である多関節機能や手振れの無い精緻な操作性は,結腸癌手術の特徴ともいえる多方向に分岐する血管に応じた郭清操作や血管切離に威力を発揮する.一方でRALSでは腹腔鏡手術に比べ鉗子の可動域に制限を受けるため操作範囲はおのずと限られる.結腸癌の手術では直腸癌に比べ広範な鉗子操作が必要になるとともに腫瘍の部位により術野も異なる.よって,結腸癌に対するRALSでは広範な術野操作を円滑に行うポート配置が腫瘍部位に応じて必要となる.そこで我々はポート配置を3領域に分け定型化した.右側結腸領域の場合:下腹部に1番から3番を横一列に,左上腹部にTip UP用の4番ポートを配置する.アシストポート(AP)は,恥骨上または左側腹部に置く.左側結腸の場合:右鎖骨中線上に1番と3番,臍部に2番,恥骨上に4番を配置することで横行結腸左側から仙骨岬角まで操作できる.APは,1番と2番ポートの間に置く.S状結腸の場合:左上腹部から右下腹部に向かい斜め一直線に1番から4番ポートを配列,2番ポートは臍部に置く.APは,右上腹部に置く.
 特に右側結腸領域のAPを恥骨上に配置すると,APから術野の操作部位に直感的にアプローチできる.このAPの配置は,若手外科医が右側結腸切除を行う際に指導的に場の展開,止血などの補助操作を行い易く有用である.また,3領域に分けたポート配置の考え方は,右側と左側の多発結腸癌の場合でもポートを重複利用することでAPを含め6ポートで対応可能であった.
 これまでに結腸癌に対するRALSを91例に行った.内訳は右側結腸切除56例,左側結腸切除36例(両側の同時切除1例を含む).手術時間254分,コンソール時間170分,出血量 0ml.癒着のため開腹移行1例.術後Clavien-Dindo GradeII以上の合併症は16例(18%),GradeIII以上は5例(6%)に認め創感染,イレウス,ポート孔ヘルニア,急性下肢動脈閉塞,術後出血であった.術後在院日数は9日であった.
 結腸癌に対するRALSは3領域に分けたポート配置により全大腸にアプローチでき,ストレスなく広範な術野操作を行うことが可能であった.また,APの配置を工夫することで,若手外科医の指導にも有用と考えられた.