講演情報
[R11-3]進行下部直腸癌に対するTNT(Total Neoadjuvant Therapy)の試み
宮倉 安幸, 松澤 夏未, 田巻 佐和子, 福井 太郎, 高山 裕司, 力山 敏樹 (自治医科大学附属さいたま医療センター一般・消化器外科)
【目的】進行下部直腸癌に対しては術前化学放射線療法(CRT)を導入し,線量の増加や化学療法レジメンの変更を行い治療成績の向上に努めてきた.最近ではCRT(50.4Gy+TS1)後にXELOXを追加(TNT)しwatch and waitも施行している.今回これらの治療成績を報告する.【方法】TNTを施行した15例を対象にTNTの有害事象や治療効果を検討した.CRTはTS-1(80mg-120mg/body)をRT施行日に内服投与した.CRTの治療効果判定後XELOX(4-8コース)を追加した.TNT後の内視鏡で瘢痕症例はwatch and waitを施行した.また治療効果については,TNT導入前のCRT単独症例38例と比較検討も行った.【成績】1)TNT15症例の検討.年齢中央値67歳(45-77),男性12例,女性3例,臨床病期cStageII:8,III:7例であった.CRT後病期は73%(11/15)でdownstageしていた.CRT中の有害事象ではGrade2あるいは3以上の有害事象はそれぞれ6例(40%),1例(7%)(放射線性腸炎)で,CRT完遂率は93%であった.CRT後のXELOX完遂率は,全例投与期間を完遂しているが10例(67%%)に減量を必要とした.XELOXにおける有害事象はG2(好中球,血小板減少,末梢性神経障害)9例,G3(好中球)1例であった.根治手術は7例に,watch and waitは8例に施行した.手術症例7例ではLAR3例,APR3例,ISR1例であった.側方郭清は2例に施行した.CD2以上の術後合併症(骨盤死腔炎,SSI,腸閉塞)の発生は3例に認めた.TNT後の病期は治療前より80%(12/15)にdownstageしていた.手術症例7例の組織学的治療効果はGrade 1a:2,1b:2,2:1,3:2例であった.TNT後観察期間中央値311日(59-1553)では,局所再発はなく,遠隔転移(肺転移)を2例認めた.2)CRT症例との比較.Watch and wait症例をCRに含めCRT群と比較すると奏効率(grade1b-3の割合)はTNT87%(13/15)vsCRT89%(34/38)と差を認めなかったが,CR率はTNT67%(10/15)vsCRT18%(7/38)(p=0.001)と有意差を認めた.【結論】CRTへの化学療法上乗せは,症例が少なく短期観察であるがdownstageならびにCR症例を増加させ有望な治療法の可能性があると考えられる.