講演情報
[PD7-1]直腸癌術後局所再発に対する手術を中心に添えた治療戦略
上原 圭, 山田 岳史, 進士 誠一, 松田 明久, 横山 康行, 高橋 吾郎, 岩井 拓磨, 宮坂 俊光, 香中 伸太郎, 松井 隆典, 菊池 悠太, 林 光希, 武田 幸樹, 栗山 翔, 園田 寛道, 小泉 岐博, 吉田 寛 (日本医科大学付属病院消化器外科)
直腸癌術後局所再発率は原発巣手術手技の発達とともに減少し,大腸癌治療ガイドライン2024年版で更新された2014年症例データでは,直腸癌術後の初発再発部位としての局所再発率は3.0%,吻合部再発率は1.5%とされている.しかし,遠隔転移出現後に局所再発を来す症例は少なくなく,またこのデータは大腸癌研究会参加のleading hospitalの一部の成績であり,大腸癌治療が日本全国,津々浦々行われていることを鑑みれば,実際の局所再発率はこの値よりはずっと高いと推測される.
局所再発の治療では,まず手術で完全切除が可能か否かの判断するところから始まる.この判断は外科医によって大きく異なり,切除の可否が治療選択と患者の運命は大きく分かれる.切除可能な場合には補助療法の種類とタイミング,あるいは代替治療としての重粒子線治療など幅広い選択肢が提示可能で患者の人生観や希望に合わせやすくなる.一方,切除不能と判断した場合,粒子線治療を含む放射線治療,化学療法の適応となるが,重粒子線による治療成績以外には治癒や長期生存を期待できる選択肢は乏しい.治癒や長期生存を強く希望する患者には手術の可能性を模索するのが主治医の義務であると考える.
切除可能な場合は切除することで一定の生存率が得られるものの,排便・排尿・性機能など失うものも大きく,治癒の可能性とQOL保持の天秤を強いられることになる.これは医療者が決めるものではなく,最終的には客観的な情報を与えたうえで患者が自分の人生観で決める事である.強いられた拡大手術の結果が希望通りにならなければ,医療者・患者双方にとっての不幸である.患者の強い希望の下,手術は行う場合には術後の局所あるいは遠隔の再発率を考慮して術前治療の施行の是非を決定することになるが,何が目的で行うのか明確に考えるべきである.すなわち局所制御が目的であれば放射線治療が中心になり,遠隔制御が主な目的であれば化学療法が大きな役割を果たすことになり,安易に決まった術前治療を行えばよいという考えには反対である.粒子線と手術の併用により根治を目指す治療戦略は今後の課題である.
局所再発の治療では,まず手術で完全切除が可能か否かの判断するところから始まる.この判断は外科医によって大きく異なり,切除の可否が治療選択と患者の運命は大きく分かれる.切除可能な場合には補助療法の種類とタイミング,あるいは代替治療としての重粒子線治療など幅広い選択肢が提示可能で患者の人生観や希望に合わせやすくなる.一方,切除不能と判断した場合,粒子線治療を含む放射線治療,化学療法の適応となるが,重粒子線による治療成績以外には治癒や長期生存を期待できる選択肢は乏しい.治癒や長期生存を強く希望する患者には手術の可能性を模索するのが主治医の義務であると考える.
切除可能な場合は切除することで一定の生存率が得られるものの,排便・排尿・性機能など失うものも大きく,治癒の可能性とQOL保持の天秤を強いられることになる.これは医療者が決めるものではなく,最終的には客観的な情報を与えたうえで患者が自分の人生観で決める事である.強いられた拡大手術の結果が希望通りにならなければ,医療者・患者双方にとっての不幸である.患者の強い希望の下,手術は行う場合には術後の局所あるいは遠隔の再発率を考慮して術前治療の施行の是非を決定することになるが,何が目的で行うのか明確に考えるべきである.すなわち局所制御が目的であれば放射線治療が中心になり,遠隔制御が主な目的であれば化学療法が大きな役割を果たすことになり,安易に決まった術前治療を行えばよいという考えには反対である.粒子線と手術の併用により根治を目指す治療戦略は今後の課題である.