講演情報

[P13-1-3]S状結腸癌術後に直腸間膜内リンパ節に転移をきたした1例

岩本 隼輔1, 横溝 肇1, 岡山 幸代1, 河野 鉄平1, 松本 敦夫2, 塩澤 俊一1 (1.東京女子医科大学附属足立医療センター, 2.滝不動病院)
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結腸におけるリンパ流,血流は原則的には中枢側に集約する方向に流れている.今回S状結腸癌に対するS状結腸切除術後に,直腸間膜内リンパ節に転移を来した症例を経験したので報告する.症例は61歳男性.1年前から血便が出現し,13kg/年の体重減少があった.健康診断で貧血の増悪と便潜血陽性を指摘され当院に受診した.特記すべき既往歴や家族歴はない.触診上,左下腹部に軽度圧痛と腫瘤を触知し,血液検査所見はHb 4.7g/dL,CEA 175.8ng/mLであった.下部消化管内視鏡検査で肛門縁から25cmに全周性の2型病変があり,生検結果はtub1,tub2だった.CTでは腸管傍リンパ節に2個の有意な腫大と,肝外側区には8cm大の肝転移が疑われた.以上からS状結腸癌 type2 tub1 tub2 cT4aN1bM1a(H2)cStageIVaと診断し,開腹S状結腸切除術+D3郭清術を施行した.病変と腸間膜をen-blocに摘出し,DMは85mmであった.病理組織診断はtype2 tub2>tub1 pT4a INFb Ly1a V1c Pn1a BD1 PM0(48mm)DM0(97mm)pN1a(1/35)であった.1か月後のCTで肝外側区の転移性腫瘍が増大したため,化学療法を先行することとしmFOLFOX6 + P-mabを11コース施行した.その後のCT検査で先の肝転移病変は縮小したが,右葉に2か所の新規病変と直腸間膜内に腫大リンパ節が出現したため,肝S7部分切除術(2か所)+肝S3亜区域切除術を先行し,FOLFIRI(1回目のみB-mab(+))3コース実施後に開腹超低位前方切除術+直腸周囲リンパ節郭清術+回腸人工肛門造設術を施行した.病理組織では直腸間膜リンパ節転移(22/22)と直腸壁内にS状結腸癌の転移結節と診断された.S状結腸癌術後の肛門側へのリンパ節転移につき脈管,神経侵襲との関連などをふまえ,若干の文献的考察を加えて報告する.