講演情報
[SR7-3]下部直腸がんの超低位前方切除・内外括約筋間直腸切除後の排便機能について
大原 真由子, 佐伯 泰愼, 米村 圭介, 田中 正文, 福永 光子, 水上 亮佑, 山田 一隆 (大腸肛門病センター高野病院消化器外科)
【背景・目的】
下部直腸がん患者において,永久人工肛門を回避したいという要望は多く,腹腔鏡やロボット支援下手術の発展により腹腔側からの内外括約筋間までの剥離が可能になり超低位前方切除(SLAR)や内外括約筋間直腸切除(ISR)が以前より比較的容易になった.一方自然肛門は温存されたが術後肛門機能の低下にてQOLが低下する場合があり問題となることがある.今回SLAR,ISR術後の肛門機能に関して検討した.
【対象・方法】
2010-2022年にSLARまたはISRを施行し一時的人工肛門閉鎖を行った279例を対象とし,排便状況・直腸肛門機能検査(機能的肛門管長,静止圧,随意圧,肛門粘膜電気感覚域値(AMES))の経時的変化を評価し,排便障害因子を検討した.
【結果】(1)患者279例の概要:平均年齢は60.4歳で男性195例,女性84例.術式はSLAR148例,ISR131例(Partial(P)-ISR 61例,Subtotal(ST)-ISR 41例,Total(T)-ISR 29例).一時的人工肛門は263例(94%)に作成.Stoma閉鎖までの期間は8.4ヶ月.
(2)排便状況:Wexner score(WS)は術前・stoma閉鎖後1年以内・1年以降で1,10,8と経時的に改善したが,1年以降でもWS11以上を36%認めた.
(3)直腸肛門機能検査:機能的肛門管長は,術後1年まで徐々に改善し術前と比較して84%まで回復.静止圧は,術後6か月まで改善し術後1年で53%まで回復.随意圧は術後1年まで徐々に改善し71%まで回復.AMESは術後1年まで徐々に改善.
(4)SLARとISRの比較:stoma閉鎖後1年以降でWS11以上の割合がISRで多く,直腸肛門機能に関しては機能的肛門管長,静止圧,随意圧,AMESいずれもISRで改善が乏しい.
(5)ISR間での比較:stoma閉鎖後1年以降でWS11以上の割合がT-ISRで多く,直腸肛門機能に関してはT-ISRが静止圧の改善が乏しい.
(6)排便障害因子:多変量解析では静止圧のみが因子として抽出.
【結語】
SLARとISRの術後排便障害は36%に認め,排便障害の原因は静止圧が最も関与していた.静止圧の主な要素は内肛門括約筋であり,特に内肛門括約筋を切除するISR予定の患者の選択には注意が必要と考えられた.また術後排便障害に対する当院の取り組みについても報告したい.
下部直腸がん患者において,永久人工肛門を回避したいという要望は多く,腹腔鏡やロボット支援下手術の発展により腹腔側からの内外括約筋間までの剥離が可能になり超低位前方切除(SLAR)や内外括約筋間直腸切除(ISR)が以前より比較的容易になった.一方自然肛門は温存されたが術後肛門機能の低下にてQOLが低下する場合があり問題となることがある.今回SLAR,ISR術後の肛門機能に関して検討した.
【対象・方法】
2010-2022年にSLARまたはISRを施行し一時的人工肛門閉鎖を行った279例を対象とし,排便状況・直腸肛門機能検査(機能的肛門管長,静止圧,随意圧,肛門粘膜電気感覚域値(AMES))の経時的変化を評価し,排便障害因子を検討した.
【結果】(1)患者279例の概要:平均年齢は60.4歳で男性195例,女性84例.術式はSLAR148例,ISR131例(Partial(P)-ISR 61例,Subtotal(ST)-ISR 41例,Total(T)-ISR 29例).一時的人工肛門は263例(94%)に作成.Stoma閉鎖までの期間は8.4ヶ月.
(2)排便状況:Wexner score(WS)は術前・stoma閉鎖後1年以内・1年以降で1,10,8と経時的に改善したが,1年以降でもWS11以上を36%認めた.
(3)直腸肛門機能検査:機能的肛門管長は,術後1年まで徐々に改善し術前と比較して84%まで回復.静止圧は,術後6か月まで改善し術後1年で53%まで回復.随意圧は術後1年まで徐々に改善し71%まで回復.AMESは術後1年まで徐々に改善.
(4)SLARとISRの比較:stoma閉鎖後1年以降でWS11以上の割合がISRで多く,直腸肛門機能に関しては機能的肛門管長,静止圧,随意圧,AMESいずれもISRで改善が乏しい.
(5)ISR間での比較:stoma閉鎖後1年以降でWS11以上の割合がT-ISRで多く,直腸肛門機能に関してはT-ISRが静止圧の改善が乏しい.
(6)排便障害因子:多変量解析では静止圧のみが因子として抽出.
【結語】
SLARとISRの術後排便障害は36%に認め,排便障害の原因は静止圧が最も関与していた.静止圧の主な要素は内肛門括約筋であり,特に内肛門括約筋を切除するISR予定の患者の選択には注意が必要と考えられた.また術後排便障害に対する当院の取り組みについても報告したい.