講演情報
[P12-2-3]膵・十二指腸浸潤を伴う再発腫瘍に対して膵頭十二指腸切除術を施行した上行結腸癌の1例
新川 智彦, 大山 康博, 櫻井 翼, 永井 俊太郎 (北九州市立医療センター)
【緒言】大腸癌の7.5-13.2%は他臓器浸潤を伴うとされるが,遺残なく切除することで他臓器非浸潤例と同等の予後が期待できるとの報告もある.中でも上行結腸癌や横行結腸癌は原発/再発腫瘍が膵頭十二指腸領域への直接浸潤を伴うことがあり,完全切除するために膵頭十二指腸切除術を要する場合もある.今回われわれは,膵・十二指腸浸潤を伴う再発上行結腸癌に対して亜全胃温存膵頭十二指腸切除を施行した1例を経験したため,文献的考察を加え報告する.
【症例】77歳,女性.膵十二指腸に接する巨大なリンパ節転移を伴う上行結腸癌(cT3N1M0cStageIIIb)の診断で根治術として腹腔鏡下右半結腸切除術・3群リンパ節郭清を施行した.膵・十二指腸部の転移リンパ節は十二指腸への浸潤が疑われたが明らかな膵浸潤は認めなかったため,十二指腸漿膜を一部含めて合併切除した.術後病理結果ではpor1+por2>tub2,pT3N1a(1/14)であったが,転移リンパ節の剥離面に焼灼された癌細胞を認め,pRM1の診断であった.術後に化学療法を施行したが,術後半年目のCT検査で膵頭部腹側に再発を示唆する軟部影を認め,膵頭部および十二指腸への浸潤が疑われた.他に再発所見は認めず,R0切除目的に亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.有意な合併症なく,術後24日目に自宅退院となった.病理結果では,腫瘍は原発巣と同様に低分化から中分化型腺癌細胞で形成され,膵・十二指腸および上腸間膜静脈浸潤を認めたが,剥離断端に腫瘍細胞は認めなかった.現在術後2年以上経過するが,再発なく経過している.
【考察】他臓器浸潤を伴う大腸癌であっても,浸潤臓器の合併切除を行った大腸癌術後の5年生存率は27~60%であり,完全切除が達成されなかった症例の生存期間中央値が11.6―13.9か月と短いことを考慮すると完全切除可能であれば他臓器合併切除を伴う拡大手術の意義があると考えられる.
【結語】膵頭十二指腸切除術は比較的高侵襲な術式ではあるが,完全切除が望める大腸癌症例では再発症例においても切除により予後延長や長期生存も期待できるのではないかと考えられた.
【症例】77歳,女性.膵十二指腸に接する巨大なリンパ節転移を伴う上行結腸癌(cT3N1M0cStageIIIb)の診断で根治術として腹腔鏡下右半結腸切除術・3群リンパ節郭清を施行した.膵・十二指腸部の転移リンパ節は十二指腸への浸潤が疑われたが明らかな膵浸潤は認めなかったため,十二指腸漿膜を一部含めて合併切除した.術後病理結果ではpor1+por2>tub2,pT3N1a(1/14)であったが,転移リンパ節の剥離面に焼灼された癌細胞を認め,pRM1の診断であった.術後に化学療法を施行したが,術後半年目のCT検査で膵頭部腹側に再発を示唆する軟部影を認め,膵頭部および十二指腸への浸潤が疑われた.他に再発所見は認めず,R0切除目的に亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.有意な合併症なく,術後24日目に自宅退院となった.病理結果では,腫瘍は原発巣と同様に低分化から中分化型腺癌細胞で形成され,膵・十二指腸および上腸間膜静脈浸潤を認めたが,剥離断端に腫瘍細胞は認めなかった.現在術後2年以上経過するが,再発なく経過している.
【考察】他臓器浸潤を伴う大腸癌であっても,浸潤臓器の合併切除を行った大腸癌術後の5年生存率は27~60%であり,完全切除が達成されなかった症例の生存期間中央値が11.6―13.9か月と短いことを考慮すると完全切除可能であれば他臓器合併切除を伴う拡大手術の意義があると考えられる.
【結語】膵頭十二指腸切除術は比較的高侵襲な術式ではあるが,完全切除が望める大腸癌症例では再発症例においても切除により予後延長や長期生存も期待できるのではないかと考えられた.