講演情報
[P19-1-7]肝転移を伴う多発大腸癌に対して集学的治療を行った1例
加藤 秀明, 橋本 聖史, 川口 雅彦, 渡邊 透 (横浜栄共済病院外科)
症例は60代,男性.2015年8月に貧血と排便困難を認め,精査加療目的に当科紹介.下部消化管内視鏡検査およびCT検査で,下行結腸から直腸S状部にかけて3つの腫瘍と肝S8に115×89mmの転移性腫瘍を認めた.症状のある多発大腸癌(主病巣はS状結腸)T3N1M1a(H2)P0PUL0に対して2015年8月に手術先行治療を行った.RAS(-),BRAF(-),MSI(-).また,食道表在癌と早期胃癌を認めて内視鏡的治療を行った.原発巣切除後にFOLFIRI+Panitumumab化学療法を施行し,2016年1月に肝右葉切除を施行した.FOLFOX補助化学療法により無再発期間を得たが,2018年5月に骨盤再発を認めて再発巣切除を施行,2020年1月に再再発切除を行った.2020年5月に多発肝転移4個を認めてFOLFIRI+Panitumumabによる化学療法を行った後に右開胸開腹肝転移切除を施行した.2022年1月に残肝再発2個を認めてラジオ波焼灼療法を施行した.化学療法に伴うネフローゼ症候群を発症したが保存加療で軽快した.2022年7月に再度の骨盤腫瘍を認めて放射線治療を施行した.2022年11月に肺転移を認めて化学療法を施行.ゲノムファイリング検査では有効な治療は認められなかった.2023年5月に吻合部潰瘍による骨盤穿通を認めてハルトマン手術を施行.腫瘍の残存を認めて2023年8月に残存腫瘍切除を施行した.骨盤膿瘍を併発してドレナージを行った.その後,肝転移増悪に伴う黄疸とリンパ浮腫を認めて2024年2月に永眠した.最近の大腸癌薬物療法の進歩によりstageIV進行再発大腸癌の予後は約30か月と報告されている.当科では肝転移を伴う多発大腸癌に対して集学的治療を行い約8年6か月の延命が可能であった症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.