講演情報

[O18-4]当院における閉塞性大腸癌に対しての術前減圧法の検討

安田 英弘, 須藤 剛, 本荘 美菜子, 半沢 光, 渡部 雅崇, 榎田 会生, 内藤 覚, 佐藤 圭佑, 深瀬 正彦, 飯澤 肇 (山形県立中央病院外科)
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【目的】
 閉塞性大腸癌の症例に対する術前減圧法の選択において明確な指標は存在しない.当科における左側結腸癌,直腸癌イレウスの手術症例において各種術前減圧法の有用性を比較検討した.
 【方法と対象】
 2011年から2023年5月にかけて当院で手術施行した閉塞性左側結腸癌45例,直腸癌49例を,緊急手術群(E群),経鼻イレウス菅群(NI群),経肛門イレウス菅群(AI群),大腸ステント群(S群)の4群に分類し,検討を行った.
 【結果】
 左側結腸癌症例,直腸癌症例のどちらも,年齢,性別,BMI,ASA-PS分類,腫瘍占拠部位,腫瘍マーカー,病理学的ステージといった患者背景において有意な差をみとめなかった.
 左側結腸癌症例はE群22例,NI群3例,AI群8例,S群12例.ストマ造設の有無,手術時間,出血量,輸血の有無,術後入院期間,術後合併症の有無に関して有意差を認めなかった.術前の経口摂取率はS群で有意に高かった(p=<0.0001).ドレナージ群(NI,AI,S群)で緊急手術への移行率において有意差をみとめなかったが,S群はNI群,AI群よりも術前ドレナージ期間が有意に長かった(P=0.032,P=0.0091).術後5年以内の再発率に有意差はみられなかった.
 直腸癌症例はE群32例,NI群3例,AI群10例,S群4例であった.ストマ造設の有無,手術時間,出血量,輸血の有無,術後入院期間,術後合併症の有無に関して有意差を認めなかった.術前の経口摂取率はS群で有意に高かった(P=0.0042).ドレナージ群(NI,AI,S群)において,緊急手術への移行率において有意差をみとめなかったが,S群はNI群より術前ドレナージ期間が有意に長かった(P=0.0322).術後5年以内の再発率に有意差はみられなかった.
 【考察】
 大腸ステントは他の減圧法と比較し,術前のドレナージ期間をより長く確保し,術前経口摂取率を高める傾向にあると考えられ,緊急手術回避(Bridging to Surgery)に最も有効な手段であると考えられた.一方で周術期成績への影響においては各群で有意な差がみられず,更なる検討の余地があると考えられた.
 【結語】
 閉塞性大腸癌の術前ドレナージ法に関して比較した本研究の結果について,文献的考察を加え報告する.