講演情報
[O25-2]当院における直腸脱に対する腹腔鏡下直腸固定術の手技と成績
矢野 雷太, 石田 駿斗, 白川 賢司, 倉岡 憲正, 小林 弘典, 坂下 𠮷弘, 石田 裕, 宮本 勝也 (国家公務員共済組合連合会広島記念病院外科)
【目的】当院では,以前は完全直腸脱に対してAltemeier手術を第一選択としていたが,再発症例に対する直腸固定術の経験から,2021年から全身麻酔可能な症例では腹腔鏡下直腸固定術を第一選択としている.文献的に指摘される術後合併症の予防を念頭に,当院で実施している手技をビデオで供覧し,その短期成績を報告する.【術前検査】全身麻酔が可能か心肺機能評価を行う.排便造影検査で直腸瘤合併の有無を評価し,合併例では後膣壁形成術を併施する.CTにて,腹部粗大病変の鑑別,大腸の走行,岬角付近の血管走行等を確認する.【手術手技】低砕石位にて,直腸癌手術と同様の5ポートとし,内側アプローチで直腸固有間膜背側に入る.上下腹神経叢前面を剥離して腸管膜を十分に授動し,左右下腹神経の走行を確認しながら尾側へ進む.下部直腸背側は肛門挙筋レベルで鼻骨末端を越えるまで剥離する.直腸授動の程度は,腹腔内からの直腸牽引にて肛門が引き込まれるのが体外から視認できるまでとしている.側方靭帯は温存を基本としているが,下部直腸の授動が妨げられる場合に限り,十分に授動できるまで左側のみ必要最小限の切離を行う.直腸の固定は,非吸収糸を用いて岬角と結腸紐を2針縫合する.腹膜は,他の骨盤臓器脱を予防するためダグラス窩を高位再建するように尾側から頭側へ連続縫合していく.直腸岬角固定部で腸管の急峻な屈曲が生じるのを防ぐため,緩く直線化する目的で固定部の数cm頭側まで腹膜を直腸に縫合している.【成績】対象は,2021年~2023年に上記術式で手術を行い1年以上経過した19例のうち,他疾患の手術を併施した2例を除く17例.15歳男性1例以外は74歳以上の女性.平均手術時間112.5分,平均出血量8.4ml.急性期の術後合併症は,膀胱炎1例.再発は2例(11.8%)で,いずれも固定糸が片方の組織から外れていた.便秘の悪化症例はなし.便失禁は術前13例のうち,8例(61.5%)で消失し5例で残存した.【考察】腹腔鏡下直腸固定術の短期成績は良好で,全身麻酔が可能な症例では第一選択になりうる.当院では導入から期間が短いため,今後も症例を蓄積して合併症回避の工夫の長期成績を評価していきたい.