講演情報

[R19-5]当院における低位筋間痔瘻に対する肛門上皮下筋層流入前瘻管切離法(EACA)の治療成績

下地 信, 東 博, 宮原 悠三, 有田 宗史 (宇都宮肛門・胃腸クリニック)
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【はじめに】2001年より我々は低位筋間痔瘻に対する括約筋温存術式として,肛門上皮下筋層流入前瘻管切離法(TA法:Trans Anal Verge Approach,のち2009年大肛誌掲載時よりEACA法:Extra Anal Canal Approachに名称を変更・統一)を施行し,その有用性を報告してきた.【対象】2001年1月から2023年6月までに当院でEACA法を施行した低位筋間痔瘻791例.本術式導入当初は適応を前方および側方症例に限定していたが,後方症例に対して開放術式を施行した症例において21.7%が難治化したことから,2017年より後方症例にも適応を拡大した.【手術内容の本質】EACA法の本質は,肛門上皮と内括約筋の間の瘻管を切離することで,原発口に近い部位で細菌流入路を遮断し瘻管の連続性を断つこと,その際に肛門管外からアプローチすることで,肛門管内に創をつくらないことにある.【手術方法】1)2次口から内括約筋外側まで瘻管を周囲組織から剥離する.2)肛門縁外側に弧状切開を置き,肛門上皮と内括約筋の間を剥離する.3)肛門上皮と内括約筋の間に存在する筋層流入前瘻管を結紮切離する.重要なのは瘻管の連続性を断つことであり,必ずしも結紮は必要ない.4)2次口側から剥離した瘻管を内括約筋外側で離断,切除する.弧状切開創は縫合閉鎖する.【治療成績】EACA全症例における治癒率は89.1%であった.筋層流入前瘻管を結紮した群と非結紮群で比較すると,結紮群の治癒率は89.7%,非結紮群の治癒率は84.7%であり,結紮群と非結紮群との間に有意差はないものの結紮群の治癒率が高かった.前方および側方症例における治癒率は91.1%,後方症例では75.3%であり,前方および側方症例と比較し後方症例は有意に治癒率が低かった.EACA術後に難治化した例は認めなかった.手術の実際を動画で供覧する.