講演情報

[O6-7]右側横行結腸癌における中結腸動脈根部への安全なアプローチ手技

佐藤 雄介, 木下 敬史, 大内 晶, 花澤 隆明, 安岡 宏展, 小森 康司 (愛知県がんセンター消化器外科)
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【はじめに】
 横行結腸癌においては,MCA領域の郭清が重要である.しかし,腹腔鏡下D3郭清の難易度は高い.温存すべき重要臓器や血管の走行が複雑であることに加え,規約やガイドラインで郭清範囲が明確に規定されていないことも要因と考えられる.当院では,尾側および頭側の両側から中結腸動脈領域へアプローチし,郭清範囲を明確にした郭清を行っている.また,操作部位に合わせて術者の立ち位置を変え,自然な角度でアプローチができるようにしている.
 【郭清手技】
 横行結腸右側の癌では,結腸右半切除術の手技を踏襲し,後腹膜アプローチの後,回結腸動静脈の尾側からアプローチする.SMV前面を露出し,郭清はSMAの左縁とし,動脈の神経叢前面まで行う.頭側へ郭清を進め,MCAの根部を確認し,さらにその頭側左側へ向けて横行結腸間膜を剥離した後にMCAの頭側で鉗子を通し,トンネリングを行っておき,頭側アプローチの際のメルクマールとしている.SMVの前面はGCT,MCVを確認し,ARCVは可能な限り尾側から切離しておく.頭側からの手術操作は,膵下縁へのアプローチが容易な患者右側から行う.郭清の上縁を膵下縁とし,これに沿って横行結腸間膜を切離する.SMVに流入するMCVを切離することで,MCAの分岐より頭側へのアプローチが容易となる.さらに左側へ進み,頭側でSMAの前面を露出し,尾側からの剥離に連続させてMCAを処理する.
 【治療成績】
 2013年から2023年までに進行右側横行結腸癌36例に対して同術式を施行した.手術時間の中央値は209分(144-373分),出血量の中央値は8ml(少量-240ml),CD GradeIII以上の合併症はイレウス1例,消化管出血1例であった.郭清リンパ節数の中央値は37個(14-82個),#223郭清リンパ節数の中央値は5個(1-15個)であった.
 【結語】
 横行結腸癌におけるMCA領域においても,郭清範囲を明確化することで安全で確実なD3郭清が行えると考えられる.