講演情報

[P1-1-2]ハイリスク全身併存疾患を有する腹腔鏡下大腸癌手術の検討

田中 裕人, 芥田 壮平, 大和 美寿々, 吉澤 政俊, 藤井 能嗣, 岡崎 直人, 石山 泰寛, 出口 勝也, 石井 利昌, 平沼 知加志, 平能 康充 (埼玉医科大学国際医療センター)
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【目的】
高齢化社会,医療技術の進歩により,ハイリスク全身併存疾患を有する大腸癌手術は今後も増加するものと考えられる.今回ASA3以上の併存疾患を有する大腸癌患者における腹腔鏡手術の現状を明らかにすることを目的とした.
【対象と方法】
当院で2007年-2019年に大腸癌に対し根治切除を施行したcStageI-IIIから併存疾患の指標であるASA-PS3以上の大腸癌患者を対象とし緊急手術,多発癌,重複癌は除外した.開腹手術群(O群),腹腔鏡手術群(L群)の2群にわけ臨床背景,手術因子,長期予後を後方視的に検討した.
【結果】
対象症例は251症例,うちO群32例,L群223例であった.年齢,性別,BMI,病変部位に有意差を認めなかった.cStageIIIはO群で多い(46.9% vs. 28.3%,p=0.04)結果であった.手術因子では手術時間は同等なもののO群で出血量が増加(190ml vs. 5ml,p<0.001)し,郭清を省略していた(50% vs. 14.8%,P<0.001).L群でClavien-Dindo分類Grade 2以上の合併症発生率が減少(34.4% vs. 17.0%,p=0.029),それに伴い術後在院日数の短縮(10日 vs. 7日,p<0.001)となった.O群では周術期死亡を1例認めた.病理学的因子では他臓器浸潤がO群で多く(9.4% vs. 1.3%,p=0.028),pStageIIIは同等であった.
長期予後では再発率(37.5% vs13.0%,p=0.001),全死亡率(40.6% vs 17.5%,p=0.004),原病死率(76.9% vs. 23.1%)がL群で良好な成績であった.
【結語】
ASA3以上の併存疾患を有する大腸癌患者においても腹腔鏡手術は開腹手術に比べ安全性,有益性が得られる可能性が示唆された.