講演情報

[P9-2-5]肛門疾患の麻酔下診察(EUA:Examination under anesthesia)の有用性

白畑 敦1,2, 佐藤 純人1, 石田 康男2, 大賀 純一1, 小林 孝弘1 (1.しらはた胃腸肛門クリニック横浜, 2.横浜旭中央総合病院)
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肛門疾患を患っても診察に対する羞恥心や疼痛に対する不安から受診をためらう事は少なくない.また肛門の診察時に疼痛を経験した場合は心理的トラウマとなり次回からの受診を避けるようになり医師と患者の信頼関係の構築に大きな弊害となる.当院では器質的な病態で診察により強い疼痛を伴う事が予想される症例や診察の疼痛に対する不安が強い症例には積極的にインフォームドコンセントを行い麻酔科診察(Examination under anesthesia:以下EUA)を勧めている.EUAの長所は疼痛が軽減されることにより,患者の診察に対する満足度が高くなる,そして正確な診断が可能となり診察と同時に処置を追加できる事である.欧米ではクローン病の肛門診察はEUAがゴールドスタンダードといわれている.短所は保険診療では請求できないため医療機関の経済的な負担が大きくなる事である.当院でのEUAは仙骨硬膜外麻酔(0.5%キシロカイン8~10mL)を基本とし抗血栓薬内服中・重度の併存疾患・仙骨硬膜外麻酔穿刺困難症例などは局所麻酔薬を全周性に内外括約筋間に注射をしている.当院にて令和6年1月1日から令和6年3月31日までの期間で肛門鏡診察をした症例は1589例(同人の重複あり)でありEUAを施行した症例は40例で2.5%であった.直腸・肛門周囲膿瘍22例(55%),陥頓痔核8例(20%),肛門疾患術後の診察4例(10%),肛門狭窄・裂肛(IBD症例含む)4例(10%),慢性肛門痛1例(2.5%),肛門違和感1例(2.5%)であった.EUA後に処置を施行した症例は31例(77.5%)で直腸・肛門周囲膿瘍の切開排膿術18例,陥頓痔核の還納8例,用手肛門拡張3例,術後出血に対する止血術1例,術後ドレーン(Loose seton)抜去1例であった.肛門診察において臨機応変にEUAを施行することは患者にとっても,また診察をする医師にとってもストレスを軽減する事ができ有用と考える.