講演情報

[O16-6]傍ストーマヘルニア発生予防の点からみた腹膜外経路でのストーマ作製の有用性

牛込 充則, 船橋 公彦, 吉田 公彦, 三浦 康之, 甲田 貴丸, 長嶋 康雄, 鈴木 孝之, 鏡 哲, 金子 奉暁, 栗原 聰元 (東邦大学医療センター大森病院)
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はじめに
 ストーマ関連合併症の晩期合併症の代表として傍ストーマヘルニア(PSH)が挙げられる.PSHの予防には腹膜外経路での作成が有用とされている.その作成には腹直筋筋鞘と腹膜との剥離が必要であり,やや煩雑なことから敬遠される場合もある.特に鏡視下手術では気腹もれがストレスにつながる.当院における結腸ストーマの成績から腹膜外経路の有用性を検討する.
 目的:結腸ストーマの腹膜外経路の傍ストーマヘルニア発生予防の有用性を後ろ向きに確認する.
 対象と方法:2010年から2021年における単孔式ストーマ症例を作成した213例の大腸悪性疾患患者(再発5例を含む)を対象とした.男性/女性:126/87,年齢中央値71歳(35‐96),BMI中央値21.6(13.7-45.0),ASA(0.1.2/3.4:173/40),ARP/Hartmann:98/115,腹腔鏡(Lap)/開腹(O)手術:75/138.腹腔内経路(D)/腹膜外経路(Ex):100/113.経時的なCT検査からPSHの発生時期を診断した.観察期間の中央値21か月(1-108).カプランマーヤー曲線で比較した.p値<0.05を有意とした.
 結果:PSHは31例(14.6%)した.D群25例(25%),Ex6例(5%)で有意にEx群に発生が少なかった(P<0.01).O群14例(10%)は発生が低く,BMI25以上の群は13/37例(35%)で高かった.カプランマイヤー曲線ではD群(P<0.01),高BMI群(P<0.01),Lap群(P=0.03)の発生が高かった.腹膜外経路での作製は開腹/Lapのそれぞれで有意にPSHの発生を抑制し(P=0.01),で高BMI群の発生も抑制した.
 考察:後腹膜経路でのストーマの作製は高リスク群でのPSHの発生を抑制し,開腹・腹腔鏡手術のそれぞれで有用であった.腹腔鏡手術では癒着が少ないことがPSH発生の要因の可能性もある.Hartmann症例では将来のストーマ閉鎖の可能性も考慮して腹腔内経路の作製をする場合も多くあるが,鏡視下手術が多く行われている中で永久ストーマとなる場合には後腹膜経路での作製が有用と考えられた.
 結語:後腹膜経路のストーマ造設は鏡視下手術ではやや煩雑な手技となるかもしれないが,PSH予防の観点からは有用な術式である.最近,当科でおこなっているトロッカーを使用した造設の工夫も踏まえて報告する.