講演情報

[VSY1-4]横行結腸間膜から考える横行結腸癌への至適アプローチ

花岡 裕, 冨田 大輔, 呉山 由花, 前田 裕介, 平松 康輔, 福井 雄大, 戸田 重夫, 的場 周一郎, 上野 雅資, 黒柳 洋弥 (虎の門病院消化器外科)
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【背景】横行結腸癌は結腸癌の中で約7~10%と遭遇頻度が低く,さらには腫瘍の局在,進行度,横行結腸の長さによっても術式選択が変わってくることが特徴である.また解剖学的な複雑性から手術の定型化が難しいとされてきた.当院では横行結腸間膜の処理を定型化することで,横行結腸癌に対して汎用性を持った手術を展開している.今回横行結腸癌に対する当院の手術成績を検討した.
 【手術手技】
 当院では横行結腸間膜の基部は右結腸静脈根部から下腸間膜静脈根部と考えて手術を行っている.右縁では十二指腸前面から膵頭部を,左縁ではIMVが膵背側に入り込むレベルで大網後葉を切開して網嚢を敗訴区側から開放する.左右から横行結腸間膜を細めるようにして中結腸動静脈を処理することで安全に横行結腸癌の手術を行っている.
 【対象と方法】
 2011年1月より2021年12月までに当院にて治癒切除を行った横行結腸癌症例を対象とし,中結腸動脈領域のリンパ節転移に注目して検討を行った.
 【結果】対象は271例,性差は男性147例,女性124例,年齢中央値は25(25-97)歳であった.手術時間中央値は252.5分,出血量中央値は0mLであった.術式は右半結腸切除115例(42.4%),横行結腸切除106例(39.1%),左半結腸切除48例(17.7%),中結腸動静脈領域のリンパ節郭清程度は3群156例(57.5%),2群105例(39%),1群10例(3.5%)であった.リンパ節転移程度はN0 209例,N1a 27例,N1b 24例,N2a 5例,N2b 3例,N3 3例であった.郭清リンパ節個数中央値は25個,#223リンパ節の郭清個数中央値は4個であった.観察期間中央値78ヶ月,死亡例は33例(12.1%),死亡リスクとしてT4a以上の壁深達度,N2以上のリンパ節転移が抽出された.
 【考察】
 当院では中央からやや右側の進行癌に対しては右半結腸切除を選択することが多い.#223リンパ節転移は3例(1.1%)とやや少ない印象であるが,今回の検討では根治切除症例に限定しており,#223リンパ節転移のある症例の多くが遠隔転移を伴っている可能性は否定できない.
 【結語】
 当院の手術手技は複雑な横行結腸癌手術を単純化し,かつリンパ節郭清程度なども必要十分になされていると思われる.