講演情報

[P8-2-2]蛍光尿管カテーテル挿入により尿管損傷なく腹腔鏡下直腸手術を施行した直腸癌の1例

田島 佑樹, 本郷 久美子, 佐子 英梨子, 松尾 一優, 大谷 理紗, 松波 光志朗, 室井 貴子, 西村 英理香,原 明日香, 林 啓太, 金子 靖, 藤崎 洋人, 葉 季久雄, 米山 公康, 中川 基人, 高野 公徳 (平塚市民病院外科)
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症例は72歳男性.残便感の精査で施行した大腸内視鏡検査で全周性の直腸癌を指摘された.病変の下縁は肛門縁6cmで,ファイバーの通過は困難であった.術前のCT検査では,多発肝,肺転移を認め,直腸癌(Rab)T4aN2aM1b cStageIVbと診断した.狭窄症状,貧血を認めることから,原発巣切除の上,全身化学療法を行う方針とした.CT検査上,腫瘍及び付近の腫大リンパ節は右骨盤壁に近接しており,術中の尿管損傷を回避するため,麻酔導入後に蛍光尿管カテーテルを留置した.腹腔鏡下にハルトマン術を行った.途中,腫瘍は右尿管に近接しており,近赤外線カメラを用いて尿管の走行をこまめに確認しながら剥離を行い,尿管周囲に深く切り込むことなく安全に温存することができた.術後は,麻痺性腸閉塞をきたしたが,禁食,補液,イレウス管留置により軽快し,第21病日退院とした.開腹手術では,従来の尿管カテーテルでも触覚により尿管の走行を確認できるが,触覚が乏しい腹腔鏡下手術では尿管の走行を認識することは困難である.蛍光尿管カテーテルは,従来の尿管カテーテルと同様の手順で留置することができ,術中必要に応じて尿管を可視化できるため,走行の正確な把握に有用と考えられる.本症例において,蛍光尿管カテーテルを選択したことで,腫瘍は骨盤壁に浸潤していたが,尿管の損傷なく腹腔鏡下手術を施行することができた.蛍光尿管カテーテルを用いることで尿管の損傷なく腹腔鏡下直腸手術を施行した直腸癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.