講演情報

[VWS1-2]当院における嵌頓痔核に対する早期手術の手術手技・治療成績

酒井 悠, 佐井 佳世, 米本 昇平, 松島 小百合, 鈴木 佳透, 小菅 経子, 紅谷 鮎美, 彦坂 吉興, 松村 奈緒美, 河野 洋一, 宋 江楓, 下島 裕寛, 岡本 康介, 國場 幸均, 宮島 伸宜, 黒水 丈次, 松島 誠 (松島病院大腸肛門病センター)
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一般に,嵌頓痔核に対する急性期の根治手術は,術後疼痛,術後出血,術後肛門狭窄などの術後合併症の可能性が高くなり,また手術自体の難易度も高くなる.そのため,まずは保存的治療を行い,腫脹が消退してからの待機的手術が推奨されるが,環納が困難な場合や症状が強い場合は,急性期に手術を行っている.当院の痔核手術は結紮切除術を基本としており,嵌頓痔核に対しても結紮切除を施行している.結紮切除の基本の「余剰となった肛門皮膚,肛門上皮,直腸粘膜を切除する」という考え方は嵌頓痔核でも変わりないが,嵌頓痔核では各種組織が腫脹・肥厚して,脆弱になっており,また消炎後に収縮することを意識することが肝要である.実際の手術動画を供覧し,手術成績を報告する.
今回は2020年12月から2024年3月までに当院で嵌頓痔核に対して根治手術をした症例を検討した.早期手術症例を検討するため,受診から手術まで1ヶ月以内の症例を選択した.症例数は62例(男性52例,女性10例),年齢中央値は52.5歳(21-83歳),発症から受診までの日数の中央値は3日(0-14日),受診から手術までの日数の中央値は1日(0-29日),平均出血量は52.3ml,平均手術時間は26.9分であった.受診から手術までの日数が短い程,出血量と手術時間は増加傾向であった.術後に腰椎麻酔下での処置を要したのは,術後出血4例(6.5%),創治癒遷延1例(1.6%),外痔核・直腸粘膜脱1例(1.6%)であった.肛門皮垂2例に対して局所麻酔で切除を施行した.術後の肛門狭窄や便失禁は認めなかった.出血率はやや高めであったが,肛門狭窄や便失禁といった治療に難渋する合併症は認めず,患者の症状・希望に合わせて早期手術は引き続き選択肢になり得ると思われる.