講演情報

[PD7-7]直腸癌の骨盤内局所再発に対する重粒子線治療後に指摘される少数遠隔転移への治療戦略

瀧山 博年, 磯崎 哲朗, 篠藤 誠, 山口 有輝子, 黒崎 宏貴, 山田 滋, 若月 優, 石川 仁 (量子科学技術研究開発機構QST病院)
PDFダウンロードPDFダウンロード
切除不能な大腸癌の術後局所再発については,2022年4月に重粒子線治療が保険適応となった.局所再発の診断には可能な限り組織診断が得られることが望ましいが,侵襲等を考慮して重粒子線治療直前にCT,MRI,PET-CTを施行し,臨床診断のみで治療を行い適応判断をしている.重粒子線治療は治療期間として4週間(16回照射/週4回)を要し,この間に同時化学療法は併施していない.その結果,重粒子線治療後の初回CT検査ですぐに遠隔転移が指摘されるケースも経験する.そこで,局所再発に対する重粒子線治療後に生じた少数遠隔転移に対してさらに根治的治療を引き続いて行った場合の長期成績向上を図るため,予後に寄与する臨床的因子について評価した.
対象は,2003年~2020年にQST病院で骨盤内再発に対する重粒子線治療を実施後1ヶ月時点で遠隔転移が新たに出現し,かつそれらが外科的切除・ラジオ波焼灼・放射線治療(重粒子線治療を含む)により根治的な治療が実施された40例とした.遠隔転移の部位としては肺が22例であった.全40例のMSTは37.5ヶ月,3年生存率は54.0%(5年21.9%),3年局所制御率は82.4%であった.重粒子線治療前までの遠隔転移切除,化学療法経験の有無はともに生存率に寄与しなかったが,治療された再発巣の個数(単発または複数)は有意に影響を与えていた(3年生存:61.8% vs 38.5%,p=0.019).骨盤の局所療法後に出現した遠隔転移に対しては治療前に単発であるかを確認するため慎重な評価が望まれ,少数転移であっても複数病変であれば早期に全身療法の導入も検討すべきであると考えられた.