講演情報

[O19-2]脾弯曲部結腸癌に対する当院の手術方法と術後成績

柿澤 奈緒, 大野 吏輝, 高橋 彩乃, 岸川 純子, 大井 悠, 長嵜 寿矢 (埼玉県立がんセンター)
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【緒言】脾弯曲部に存在する結腸癌は,体腔の最深部に存在し,血管の分岐や温存すべき周囲臓器との境界が分かりにくく,至適郭清範囲が明確になっていない.
【目的】脾弯曲部結腸癌に対する当院の腹腔鏡下手術アプローチ法を示し,リンパ節郭清範囲と術後成績を検討する.
【対象と方法】脾弯曲部結腸癌を,脾結腸曲から10cm以内の横行結腸から下行結腸の範囲にある腫瘍と定義し,2010年3月から2022年4月の期間に治癒切除を施行した50例を対象とした.臨床病理学的因子を後方視的に検討し,当院での手術方法を提示する.
【結果】1)臨床学的因子;男性31(62%):女性19(38%),年齢71歳,横行結腸24(48%):下行結腸26(52%),腹腔鏡手術35(70%),手術時間256分,出血量42g,再発4(8%)(肺転移2,腹膜播種1,傍大動脈リンパ節転移1),観察期間49ヵ月,2)病理学的因子;pT1 8(16%):pT2 8(16%):pT3 29(58%):pT4 4(8%),pN0 36(72%):pN1 14(28%)(#221転移4:#231/232転移10)
【手術方法】当院の腹腔鏡下手術法を示す.腹腔鏡下5ポートで行う.1)内側授動:下行結腸を腹側外側に挙上し,十二指腸と結腸間膜の境界から下腸間膜静脈背側に入る.後腹膜との境界を剥離して,結腸間膜を腹側に挙上し,頭側方向に授動を進めていく.この方法では副中結腸動脈の根部や下腸間膜静脈流入部が分かりやすく,郭清の右側縁を同定しやすい.膵下縁を同定してさらに頭側に剥離を進め,網嚢腔に入る.2)外側授動:S状結腸の壁側腹壁癒着部から授動を開始して,下行結腸脾弯曲部の手前まで外側授動を行う.3)頭側アプローチ:横行結腸を尾側に牽引し,網嚢を開放して,横行結腸間膜の腹側から脾弯曲部に向けて切開を進める.1)の剥離が十分であれば,このアプローチでの腸間膜付着部が同定しやすい.血管は,副中結腸動脈または中結腸動脈左枝,左結腸動脈の切離をする.この操作によって,安全で至適なリンパ節郭清を伴う手術を行うことが可能である.4)正中切開創を広げて結腸を体外に誘導し,腸管切除,FEEAを行う.
【結語】当院で施行している脾弯曲部結腸癌の手術方法は手術成績から鑑みても妥当なものと考える.